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はいはい、サナギさんですよ。このままほっとくとあなたもサナギさんになっちゃいますよ。なんねえよ。
特に面白かったネタを幾つか。以下、壮絶なネタバレ地獄なので死にたくなかったら泣いて悔やんで帰るがいい。
「スーパーとかでよく『お客様感謝デー』ってあるけど
従業員はそれ以外の全ての日を『死ね死ねデー』って呼んでるらしいよ……」
フユちゃんの心の闇を見ました。この子、絶対に将来ビッグなことをするよ。猟奇殺人とか。
「結果的に宇宙の秘密を全部吐くよ」
「巨大拷問水車だ!」
もうひとつ。
「雨天決行!」
「本気過ぎる!」
どちらもコンビネーションが実に鮮やか。五年や十年の付き合いではありませんね。見事です。
「出たーっ
ネガワクバーだ!」
サナギさんの屈託のない笑顔が憎い。憎い。憎すぎる。なにが「出たーっ」だよ。
そして、今回のベストヒット。
「『泣いた赤鬼』とほぼおんなじだけど結末だけ違う
『ノーリアクションだった赤鬼』ね」
最強。
あとがきが名文なのはいつもどおり。ただ、言葉の選び方にまだどうもしっくり来ないところもあるので、そのあたりの課題が解決されたらきっと施川ユウキは小説を書くのだろう。
ラストがデウス・エクス・マキナ全開だったのでとてもびっくりした。まさか森や猫がそういう伏線だったとはね。これには完全にやられました。油断していたところに左フックを入れられてしまった。こうなってくると、逆に今度はトンミのオチの弱さが際立ってきますよ。
最後はちょっと例外として、全体に、ストーリーや小ネタや演技よりも、ひとつひとつの画の美しさに圧倒されました。食堂の内装を中心として、ヘルシンキの街もサチエの部屋も、どれも配置配色が無茶苦茶うまい。森のシーンには息を呑みました。これは、いつか、フィンランドに行かざるを得ませんね。
あと料理がどれも本当に美味しそう。シナモンロールを作るとか、生姜焼きの汁をかけるとか、トンカツを包丁で切るとか、もう、なんだかずるいですよ。食事の描写がうまい作品に悪いものはないと申しますが、いや、やっぱり申しませんが、とにかく、説得力というのはそういった生の根幹に関わるところにおいて特に色濃く現れるものなのかも分かりませんね。
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