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2005/3/1 Tue

 春さん春さん早く来なさい

 十一時頃に起きて、しばらくぼーっとしている。今日は天気は悪くないけどちょっと寒いなあ。朝食を取る。ニンジンのホットケーキ、リンゴ、シュトーレン。良い昼食でした。パソコンに向かう。のんびりしています。部屋を出たのは一時頃。自転車で西日暮里、電車で代々木上原、歩いて研究所。研究室ではコーヒーを飲んでお菓子を食べる。ぼーっとしています。計算する。九時頃には帰ることにする。走って代々木上原、電車で西日暮里、自転車で部屋。夕食を取る。ご飯、味噌汁、赤魚の包み焼き、豆腐と卵と野菜のスープ。なかなか美味しい夕食でした。お風呂に入る。シュトーレンを食べて、お茶を飲む。美味しいなあ、シュトーレン。
 日記を書きます。十二時過ぎ。明日はシンポジウムがあるので早起きしないといけない。まあ何はともあれ、こうして三月も始まりました。桜の花が楽しみですね。

 しばらくぼーっとして、一時半頃には寝ます。明後日は桃の節句ですが、しかし雛祭りの歌はどうしてあんなに暗いのでしょうね。まあそもそも日本の古い歌は概して暗い曲が多いような気がするけれど。国歌だって決して明るくはない。そういえばキシピ氏がよく指摘しているように、何故「通りゃんせ」が横断歩道で使われるのかが分からない。交差点であんな曲が流れてたら、そりゃ事故を起こすよ。あの曲、怖いって。

[ 研究 ] Biskampを読む

 計算のフォローあるのみ。近似計算で特定の項を捨てる基準がどうもよく分からない。弱ったなあ。

[ 花瓶 ] 057:花瓶に蜂蜜を塗らない

 松下がまた馬鹿なことを言い出した。熊を捕まえるというのである。ここは確かにちょっと田舎かも知れないし、裏山には野生の動物も棲んでいるだろうが、流石に熊まで生息しているとは思えない。しかし松下はどうしても裏山に行くと言って聞かないので、仕方なく俺も一緒に行くことにした。松下は大きなリュックサックを背負って歩き出した。そりゃ熊を捕まえるのには荷物が必要だろう。しかし猟銃もなく素人が野生の熊を仕留められるものなのだろうか。まあそもそも熊なんていやしないのだから気にしたって仕方ない。裏山は子供の頃と変わらずに草木が生い茂っていて、湿っぽい空気は息が詰まりそうなくらいだった。松下は小道から逸れると奥の林の方に入っていった。俺も背の高い雑草を踏み締めて後ろを歩く。相変わらずこの感覚はちょっと苦手だ。薄暗い木々の中で松下はリュックサックを下ろした。中には花瓶と蜂蜜と刷毛とロープが入っていた。松下は身軽そうにカエデの木に登ると、俺にロープと花瓶を渡すように言った。花瓶をロープの端に結び付けて木の枝に吊り下げる。蜂蜜のビンを開けて刷毛で花瓶に塗っていく。こいつは本気で熊を捕まえるつもりなんだろうか。そんなことをしても虫が来るだけで終わりだ。そりゃもしかしたら虫を食べに大きな虫がやってきて、その大きな虫を食べに動物がやってきて、その動物を食べに更に大きな動物がやってくるかも知れない。でもその連鎖の果てに熊が来るとは俺にはどうしても思えなかった。松下は一心不乱に花瓶に蜂蜜を塗っている。相変わらずこの女の考えることはよく分からない。熊は花瓶を見付けたらどうするのだろうか。俺の中にいる大きな熊は、目の前に吊るされている花瓶を睨み付けて、その真っ黒な手を振り上げた。山の匂いと蜜の匂いがした。

2005/3/2 Wed

 スーツを着ていくべきだったか

 起きたのは九時頃。寒いなあ。眠いなあ。しかし寝ているわけにはいかない。部屋を出たのは九時半頃。自転車で西日暮里、電車で代々木上原。松屋で昼食を取る。歩いて研究所。研究室に寄ってからシンポジウムに行く。研究室に戻って計算をする。またシンポジウムに行き、研究室に戻ってくる。コーヒーを飲んで、チョコレートを食べる。ちょっと食べ過ぎだ。計算。
 日記を書きます。五時。なんだか少し疲れた。ちょっとしたいことがあるので駒場に行ってきます。

 歩いて駒場。情報棟に行くものの、ウィンドウズ端末がどこにあるのか分からない。やれやれ。ピアノの会の会室に行き、後輩と話をしてピアノを弾く。歩いて代々木公園。お腹が空いたのでパン屋でパンを買って食べる。電車で西日暮里、自転車で部屋。八時過ぎに到着。しばらくぼーっとして、夕食を取る。ご飯、納豆、和風スープ、おからの煮物。またしばらくぼーっとしている。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。スタイルシート切り替え用 JavaScript を見付けたので使ってみることにする。トップページの文字サイズを変更できるようにしました。少し奇妙な気分になりますね。お風呂に入る。どうも気分はあまり良くない。なかなか眠れない。
 眠れたのは朝の七時頃でした。まあそういう日もありますよ。仕方ありませんって。

[ 研究 ] 第20回TSFDシンポジウム

 第20回TSFDシンポジウム。専門と関係がありそうな前半の講演だけを聞いてきました。火炎の話や多孔質の話が面白かった。勉強したくなってきますね。乱流という分野にはまだまだ果てしない未開の地が広がっているのだなあと実感します。
 計算。角運動量の保存について。参考書の式(2.54)には符号のミスがあるようだ。また式中にあるrは変数ではないようなのだけど、それならどうして分数に分解しているのだろう。謎だ。

[ 花瓶 ] 058:花瓶に本を置かない

 その部屋は足の踏み場もないくらい、床の至るところに本が置かれていた。床だけではない。本棚は言うまでもなく、机の上にも、椅子の上にも、布団の上にも、本が積み重ねられていた。よく見たら中華鍋の中やゴミ箱の中にまで本があった。私は敷居の上に立って、ぼんやりとその部屋を眺めていた。部屋の主は器用にその部屋の真ん中で安座して、明かりもつけずにひたすら本を読んでいた。前髪は長く、眼鏡は汚れていた。相変わらずこの部屋は本ばかりだね。まあ、と彼は本から目を離さずに答える。そのうち君は本に押し潰されて死んでしまうよ。嫌いなものに押し潰されて死ぬよりは、好きなものに押し潰されて死んだ方がましだ。私は肩を竦めた。昔からこの男は私の言うことを聞いたためしがない。私はもう帰ろうかとも思ったが、部屋の隅にあったものを見て、少し引っ掛かってしまった。それは小さな戸棚で、その上には花瓶があった。そこには一冊の本も置かれてはいなかった。花瓶は全体に薄く紅色で、椿の花の絵が描かれていた。花瓶はこの本ばかりの部屋の調和をどこか崩している気がした。どうしてそこには本を置かないんだい。そこって、どこだ。戸棚の上。花瓶があるじゃないか。あるね。花瓶の上に本を置いたら危ないだろう。私にはもう何も言えなかった。相変わらず彼は本から目を離すことなく、部屋の真ん中で安座していた。花瓶の中の椿はこの上なく赤かった。もう夕方も終わろうとしている時刻だった。

2005/3/3 Thu

 雛祭りには散らし寿司ですよ

 起きたのはお昼の一時頃。まあそりゃそうなってしまうだろう。仕方ない。しばらくパソコンに向かう。文字の大きさに関して調整を行う。どのようなサイズがベストか。大きすぎず、小さすぎず。こういうことには無駄にこだわってしまう自分です。昼食を作ることにする。トマトソースパスタ。
 部屋を出たのは四時頃。自転車で大学。総合図書館で端末に向かい、カウンターの設置を行う。何故か部屋からだとうまく出来なかったので、ウィンドウズ端末から適当なソフトを使ってアップロードしました。キシピ氏と待ち合わせ。歩いて秋葉原。肉のハナマサでソーセージなどを買っていく。パソコン関係のお店を見ていく。デジカメは安ければ数千円で買えるようだ。面白そうだから買ってしまおうかな。末広町のマクドナルドで軽食を取り、ベローチェでコーヒーを飲む。色に関して議論する。RGBといった考え方だと色は三次元の立方体に押し込められているけれど、色相明度彩度といった考え方だと三次元の球に押し込められるのではないか、といった話。緯度は明度で、経度は色相。中心軸に向かうと彩度は落ちて軸上で灰色になる。外に出ると雪が降り出している。湯島で別れる。自転車で部屋に戻ります。
 部屋では夕食を取る。散らし寿司、味噌汁、わかさぎのムニエル。とても美味しい夕食でした。しばらくぼーっとしている。色々と作業をする。なかなか面倒なもので。一時頃には何とか片付きました。お風呂に入って、洗濯をする。しばらくぼーっとしている。あまり気分は良くない。
 寝たのは四時過ぎでした。今日行った作業についてメモ。まず文字サイズを変更できるようにした。次にピアノのページを他のページと同じく大学のサーバーに置くようにした。ただし音楽ファイルは geocities に置いてある。それからカウンターを最新のものにして、延べアクセス数でなくホストアクセス数を表示するようにして、全日記ページに設置した。以上。まあこういう作業をするのは嫌いではありませんよ。

[ 食事 ] 部屋でトマトソースパスタを作る

 昼食。缶詰のトマト、タマネギ、ニンニク、鶏肉ハムをフライパンで煮て、茹でたパスタを加える。塩と砂糖と黒胡椒で味付け。ちょっと火を通し過ぎたのか、汁気が殆どなくなってしまった。香辛料がちょっと多すぎたような気がする。まあ悪くない昼食でした。

[ 花瓶 ] 059:花瓶に木を植えない

 久し振りに庭に出て、ああ、と私は思った。それは妻がまだ生きていた頃のことだ。私は知人から苗木をもらってきたのだった。しかし手元には植木鉢がなかった。その頃は私達も都心のアパートに住んでいて、庭など持てるはずもなかった。妻は下駄箱から古い花瓶を取り出してきた。苗木は花瓶の中にすっぽりと入った。その様子は今でもはっきりと思い出せる。植木鉢を買おうと思えばいつでも買えるはずだった。しかし苗木と花瓶の組み合わせは、まるで仲の良いつがいの小鳥のように、もうどうしようもなく引き離しがたいものに思えた。私達はやがて娘と家を持つようになったが、それでも苗木は庭の片隅に置かれた花瓶の中で育ち続けた。いつか苗木を庭に放てばいい。そう考えていた。しかしある日、妻が倒れた。それから先の私達は、あまり幸福ではなかったかも知れない。私達から奪われた団欒は最後まで取り戻すことができなかった。思えば長い月日が流れたものだ。私は庭の隅に行こうとして、途中で立ち止まった。妻は何も言わずに死んでいった。病室に娘は来なかった。今更俺に何ができるんだ。私は家に引き返して夕食の支度を始めることにした。

2005/3/4 Fri

 雪は嫌いじゃないですけどね

 午後の一時頃に起きて、しばらくぼーっとしている。外には少し雪が積もっている。台所にあったものを適当に食べて、一時半頃には部屋を出る。歩いて町屋、電車で代々木上原、歩いて研究所。コーヒーを飲む。三時から五時過ぎまでセミナー。お菓子を食べてコーヒーを飲む。しばらくぼーっとしている。
 七時前には研究所を出て、歩いて代々木上原、電車で新御茶ノ水、御茶ノ水から電車で小岩。八時から十二時までピアノのお仕事。そこまで調子は良くない。新しい自作曲をどう料理したものか、悩ましいところである。面白い曲になるといいなあ。お仕事を終えて、電車で御茶ノ水、新御茶ノ水から電車で町屋、歩いて部屋。しばらくぼーっとして、ご飯と納豆とお味噌汁を食べる。お風呂に入る。のんびりしています。
 寝たのは四時頃でした。どうも妙に疲れている。そんなに活動していないはずなんですけどね。

[ 研究 ] 研究室セミナーで助手さんの発表

 Turbulent Dynamo in the Solar Convection Zone について。黒点の動きをダイナモの考え方から説明しようというもの。ローカルに式を立てて線形解析。しかしどうもそこまで的確な説明にはなっていないようだ。パーカーのドグマという話はなかなか面白かった。やっぱり偉い人の一言ってのは大きいんですね。

[ 花瓶 ] 060:花瓶にボトルシップを作らない

 斎藤は僕の部屋に入ってくると自慢げに花瓶を見せてきた。なんでも花瓶には斎藤の作ったボトルシップが入っているのだという。来る日も来る日もピンセットを動かし続け、十六ヶ月にも及ぶ努力の果てに完成した労作であるとのことだ。しかし僕にはちょっと信じられなかったので、適当にあしらおうとしたのだけど、斎藤は執拗に食い下がってきた。どうして信じてくれないんだ。だって普通ボトルシップってのは、透明な瓶だからできるんじゃないか、そんな花瓶でできるとは思えないよ。お前は馬鹿か、だから凄いんじゃないか。それにどうして船が完成しているって分かるんだい、もしかしたら部品が無茶苦茶な形でくっついているだけかも知れないじゃないか。それならどうすれば信じてくれる。もういいよ、分かった、信じる、信じるって。嘘を吐くな、どうすれば信じるんだ。ああ、じゃあ花瓶にドリルで穴でも開けてくれよ。そんなことをしたらそこからボトルシップを作ったと思われるじゃないか。知るかよ。もういい、割ればいいんだろ、割れば。誰もそんなことは言ってないだろ。いいよ、割るよ、見てろよ。斎藤はこういう奴である。爪先から脳天まで馬鹿な奴だが、逆上するところは何度見ても飽きない。

2005/3/5 Sat

 美味しいあんみつを食べに行こう

 十一時頃に起きて、しばらくぼーっとしている。昼食にご飯と餃子を食べる。なかなか美味しかった。二時頃に部屋を出る。皇居をぐるりと一周してくる。部屋に戻ってきたのは六時頃。谷中で買ったお惣菜を食べる。しばらくパソコンに向かってぼーっとしている。カレーを作ることにする。カレーライスを食べる。またパソコンに向かう。お風呂に入る。林檎が食べたくなったので近所の SHOP99 に行って買ってくる。林檎を食べる。美味しいですよ、林檎。しばらくぼーっとしている。
 寝たのは五時頃でした。深夜に林檎を買いに外に出ると、不思議な気分になるものです。

[ 外出 ] 自転車で皇居周辺に行く

 部屋を出る。自転車で三河島、鶯谷、上野公園。不忍池の方に下りて、ふくしま会館に寄ってみる。福島だ。路地裏を通って、秋葉原、神田、東京。八重洲の方に回って、大丸の DAIMARU MUSEUM で「チャールズ&レイ・イームズ」展を見る。ひたすら長さスケールを変えていく映画がちょっと面白かった。地下の食品売り場を眺めて歩く。
 自転車を回収して、皇居の方へ。皇居の周りを時計回りに半周する。靖国神社の前に出て、外堀通りに向かう。神楽坂の「紀の善」に行く。堪能。外に出ると風が冷たくなっている。のんびり帰ることにする。本郷に行き、路地裏を通る。なかなかここは古くて良さそうな家が多いなあ。向丘にあった大学の寮がなくなっていてびっくりする。すっかり空き地になってしまった。団子坂を下りて、谷中銀座へ。ここは割と好きな商店街です。色々と買い物をしていく。日暮里の駅を通過して、三河島の方から部屋に戻ります。

[ 食事 ] 神楽坂「紀の善」に行く

 クリームあんみつを食べてきました。これはうまいなあ。あんみつがこんなに美味しいものだとは知りませんでしたよ。餡子が実に素晴らしい。値段はちょっと高いような気もするけれど、お茶やお煎餅も頂けることを考えれば妥当なところかも。また来たいですね。

[ 食事 ] 谷中銀座で買ったお惣菜を食べる

 コロッケ、唐揚げ、肉団子。安くて美味しい。野菜コロッケが一枚三十円というのが嬉しいなあ。学部の頃にこのお店を知っていたら、かなり使い込んでいたに違いない。

[ 食事 ] 部屋で和風カレーを作る

 隠し味に肉団子の汁を入れておく。ハクサイ、マイタケ、ネギ、ジャガイモ、鶏肉を煮込んで、スパイスとカレールーを加える。和風カレーの出来上がりです。簡単だ。味は悪くない。マイタケがなかなか美味しいですね。

[ 花瓶 ] 061:花瓶に不意打ちを食らわさない

 やっぱり不意打ちしかないと思うんだ。相変わらずの暗い顔で吉岡さんはそんなことを言ってきた。ほら、野田の奴は身長も体重も結構あるしさ、それに普段から部活で鍛えてるじゃないか。それに比べて俺はこんなだろう。自慢じゃないけど、俺、懸垂ができたことないんだ。だからやっぱり不意打ちしかないと思うんだよ。そうですか、と僕は小さく相槌を打った。吹き出すのを必死で堪えていた。そうだな、この花瓶を野田の奴だとしようじゃないか。まずは笑顔で近付くんだよ。右手を挙げて挨拶なんかしちゃってさ。今までのことは全部忘れることにした、元通り仲良くしようじゃないか、そんな風に思わせるんだ。なるほど。僕は小さく頷いた。でもそんな簡単にうまく行きますかね。行くんだよ、黙って聞いてろ。はいはい。頃合いを見計らって、軽く奴の肩か背中を叩くんだ。射程距離に入るわけさ。そして奴が油断したところで、グサっとね。決まりさ。見てろよ。僕は小さく頷いてから、花瓶を指差した。だけどその花瓶、割れてませんよ。仕方ないだろ。自慢じゃないけど、俺、懸垂ができたことないんだ。きっと不意打ちになってなかったんですね。そっか、気付かれていたのか、どうしてだろう。もう一回やってみたらどうですか。そうする。僕はもう帰りますよ。そうか、今日もありがとな。いえいえ、がんばって下さいね。僕は外に出た。もう限界だった。吉岡さんに聞こえないように声を殺しながら、僕は息を洩らして笑い出した。

2005/3/6 Sun

 ジャムって言葉は割と好きです

 起きたのは午後の三時頃。ああ、よく寝てしまいましたね。着実にダメ人間街道を歩んでいるようで。トーストと林檎を食べる。しばらくぼーっとしている。あまり気分は良くない。コートのポケットが破けていたので針と糸で直す。四時半頃に部屋を出る。市ヶ谷に行ってくる。戻ってきたのは八時過ぎ。夕食を取る。ご飯、納豆、焼き魚、カレーの余り。洗い物を済ませる。外に出て、自転車で町屋に行き、戻ってくる。テレビに向かって「ガキ」を録画する。しばらくぼーっとしている。お風呂に入る。浴室の掃除をして、トイレの掃除をする。洗濯。パンにジャムや蜂蜜を塗って食べる。なかなか美味しい。
 寝たのは四時過ぎでした。ジャムはアプリコットジャムが好きです。そういえばミルクジャムを食べてみたいなあ。

[ 外出 ] 東京大学ピアノの会の卒業演奏会に行く

 部屋を出て、自転車に乗る。西日暮里まで行き、不忍通りを西へ。護国寺の辺りで音羽の方に入って、神楽坂を下りて外堀通り。ルーテル市ヶ谷センターに行き、ホールでピアノの演奏を聴く。とても良い演奏ばかりでした。もう後輩達も卒業なんですねえ。一年前が懐かしいもので。みんなと話をする。同じ学年の人達と話したのは何ヶ月振りだろう。後輩に愚痴をこぼしていたら、少しは気が楽になりました。ダメ人間で済みません。生まれてきて済みません。帰ることにする。外堀通りで水道橋まで行き、白山通りで白山へ。団子坂を下りて、千駄木で買い物をしてから帰ります。

[ 花瓶 ] 062:花瓶にしがみつかない

 母は未だにあの詐欺師のことを信じているようだ。お札もお守りも決して手放そうとはしないし、教えられた呪文は毎日欠かさずに唱えている。奴は口先三寸で人々からお金を巻き上げ、夜逃げした挙句に些細なことで警察に捕まり、もう裁判も終わって今は刑務所に服役している。それでも未だに奴を信じている人は決して少なくない。お守りの中に入っているのがただの厚紙であることも、清めの塩がスーパーで売っていた化学塩であることも、奴は既に認めている。母が貯金を投げ打って手に入れたあの花瓶が、フリーマーケットで買い集めた二束三文の品であることも分かっている。それでも母はもう、あの花瓶にしがみつかずには生きていくことができない。母は毎朝必ず新品の布巾で花瓶を拭く。奴から買った聖水を使って丁寧に磨き上げる。内側と外側では違う水を使うらしい。一回の作業に最低でも四枚の布巾が使われる。乾拭き、水拭き、水拭き、乾拭き。そして最後には花瓶に向かって深々とお辞儀をする。私はその様子を見る度に心底ぞっとしてしまう。私や妻が花瓶に触れようとすると、母は血相を変えて花瓶を奪い取る。そして必ず嫌な空気が流れるのである。母は決して悪い人間ではない。ただ少しばかり騙されやすかっただけだ。私にはどうすることもできない。妻はあの花瓶を割ってしまいたいという。そうすれば母の目も覚めるだろう、と。確かにそうかも知れない。私は時々、母が風呂に入っている隙を狙って、こっそりと花瓶の箱を開ける。右手には金槌がある。私がその気になれば、私が右腕を振り下ろせば、私達に巣食っている呪いは消え去って、また三人で囲む温かな食卓が戻ってくるのかも知れない。しかし、もしも花瓶と一緒に母の心まで砕け散ってしまったらと思うと、私にはどうしても右腕を振り下ろすことができないのである。私はいつもこう思う。誰かが後ろから私の頭をつかんで、力任せに花瓶に叩き付けてくれたらいいのに、と。

2005/3/7 Mon

 よく晴れた日だから散歩をしようか

 十二時半頃に起きて、しばらくぼーっとしている。天気は良い。どうも寝違えてしまったのか、背中から首の辺りに痛みがある。嫌だなあ。二時頃に部屋を出る。世田谷区に行ってくる。戻ってきたのは九時頃。あまり体調が良くない。食べ過ぎたのかな。近所のスーパーで買い物をする。夕食に味噌ラーメンと餃子を食べる。なかなか美味しかった。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。お風呂に入る。しばらくぼーっとしている。あまり気分は良くない。ゆっくりと心を落ち着かせる。別に難しいことじゃない。しばらくぼーっとしている。チーズを食べて、牛乳を飲む。
 寝たのは朝の八時頃でした。考え事はふわふわと宙を舞っています。僕の考え事なんて塵くらいの価値しかないのかも知れませんが、しかし光の中を塵が浮かんでいる様を見ているのは嫌いではありません。そういうものですよ。

[ 外出 ] 世田谷区に行く

 部屋を出る。自転車で西日暮里、電車で代々木上原。南に向かって歩く。上原、代沢、三宿、池尻、下馬。この辺りはレベルの高い家が多いですね。いつかこういう住宅地に住みたいもので。庭のある小さな家がいいなあ。チーズケーキファクトリーに行き、思う存分チーズケーキを食べる。満腹です。チーズケーキは重たいなあ。世田谷公園を歩く。ここは広くてなかなか悪くない公園ですね。羽根木公園を思い出します。犬を連れた人達が集まっている。空はとてもきれいな藍色である。気分はとても良い。小物を売っているお店を覗いていく。三軒茶屋まで歩く。初めて来たけれど、こういう街なのか、なるほど。色々お店を眺めていく。チーズと生ハムを買う。不動産屋さんの物件紹介を見る。ううむ。いい部屋は高いなあ。早くお金を稼げるようになりたい。電車で渋谷、大手町、千駄木。谷中を歩いて西日暮里へ。自転車で部屋に戻ります。

[ 食事 ] 三宿「チーズケーキファクトリー」に行く

 二回目。今回も堪能させて頂きました。もう当分チーズケーキはいいです。個人的にはチーズのプリンが最も良かったですね。こういうの、大好きです。全体にベイクドよりもレアの方がありがたいのはバイキングだからだろうか。フルーツを使ったケーキが美味しかった。チーズケーキ好きとしてはやはりここは嬉しいお店ですね。

[ 花瓶 ] 063:花瓶に喧嘩している犬と猫を入れない

 いえ、私の飼っているペスとミイはいつも喧嘩ばかりしてましてねえ。本当に困ったものなんですよ。血を見ることだって少なくありませんからね。いつも仲良くしなさいって言っているのに。全く。それで、あいつらを狭いところに閉じ込めておけば仲良くなるかもなって思ったんですよ。ほら、お互いのことをよく理解できていないから、喧嘩ってのは起きるわけじゃないですか。そこでね、家に要らない花瓶があったからその中にペスとミイを入れたんです。いや、入ったんですよ。何がおかしいんですか。暴れるペスとミイを花瓶の中に入れて、しっかり蓋をして一晩放っておいたんです。ええ、テーブルの上に置いておきました。それで今朝になって見てみたら、花瓶がなくなっているじゃないですか。テーブルの上にないんですよ。どうしたんでしょうね。誰かが私の家に忍び込んで花瓶を盗んだのでしょうか。分かりませんね。しかしペスとミイはどこに行ったんでしょう。ねえ。一体どこの誰が、喧嘩している犬と猫が入っている花瓶を盗むんでしょうね。

2005/3/8 Tue

 アボカドと生ハムはよく合いますね

 午後の一時半頃に起きて、ちょっとぼーっとしている。今日はとてもいい天気で、風からは春の匂いがする。いいなあ。昨日の味噌ラーメンのスープでおじやを作って食べる。なかなか美味しかった。林檎を食べる。二時頃には部屋を出る。自転車で西日暮里、電車で新御茶ノ水。定期を購入。電車で代々木上原、歩いて研究所。しばらくぼーっとしている。コーヒーを飲んで、お菓子を食べる。計算をする。のんびり過ごしています。いつも通りです。
 日記を書きます。九時半。帰ります。安物でいいからワインが飲みたいなあ。チーズと生ハムを食べるんだ。

 研究所を出て、歩いて代々木上原、電車で西日暮里、自転車で帰ります。コンビニで安物のワインを買っていく。部屋で夕食を取る。ご飯、お味噌汁、魚の煮物、おからの煮物、ほうれん草のおひたし。とても美味しい夕食でした。しばらくぼーっとしている。お風呂に入って、洗濯をする。のんびりしています。
 日記を書きます。二時半。それじゃ、ワインを飲むことにしますかね。

 アボカド、生ハム、ソーセージを食べて、ワインを飲む。悪くない時間である。しばらくぼーっとしている。横になるものの、なかなか眠れない。まあよくあることだ。そんなに珍しいことじゃない。気にしたって仕方ありませんよ。
 寝たのは朝の七時頃でした。生ハムはとても美味しかった。また食べたいですね。

[ 研究 ] Biskampを読んで、計算をする

 pp.24-pp.26。時間がかかるので計算のフォローは省くことにした。詳細より大略を理解するようにしよう。
 揺らぎの基礎方程式を立てる。次は TS を導入して、フーリエ変換か。ミスしないように気を付けないと。

[ 花瓶 ] 064:花瓶に雨漏りを入れない

 安田が電話で呼び出してきた。この大雨の中、歩いて一時間はかかる安田のボロアパートまで、今すぐ来て欲しいというのだ。電話はすぐに切れて、俺は心底うんざりした。無視してしまっても構わなかったのだが、もしかしたら病気や怪我で動けないのかも知れないので、仕方なく俺は蝙蝠傘と雨合羽を引っ張り出した。安田のアパートまでは絶望的に遠かった。そりゃ普段なら一時間もあれば着く。軽めの散歩に丁度いいくらいだ。しかし今日はこの大雨である。途中の小川を渡れる自信もなかった。雨の中を歩いていると色々なものが目に入る。傾いた看板、折れた木の枝、泳ぐ蛇。俺は一歩一歩を踏み締めながら歩いた。途中で北原と合流した。北原も安田に呼び出されたらしかった。岸下も西村もいた。俺達は途中から傘を差すことを諦めて、ポケットに手を突っ込んで歩き続けた。やっと安田のボロアパートに着いた。大雨のせいで安田のボロアパートはいつも以上に惨めに見えた。部屋の中には安田がいた。どう見ても病気でなければ怪我もなかった。満面の笑みまで浮かべていた。よく来てくれた、みんな、まあこれを見てくれ。俺達は雫を垂らしながら安田の部屋に入った。そこは相変わらず汚い部屋だったが、珍しいものが中央に置かれていた。それは花瓶だった。安田と花瓶という組み合わせは、アザラシと聖書くらい不自然だ。あるいはキリギリスとミシンくらい不自然だ。それはまあいい。花瓶の用途は一目瞭然だった。天井から雨漏りが落ちてきているのだ。花瓶はそれを受け止めているのである。安田は言った。これは芸術なんだ。五分に一度は水を外に出している。天空から零れ落ちた清らかな雨粒が、きっと地上の人間には真似もできないような、滑らかで美しい形を作ってくれるんだ。俺には安田のしたいことが実によく分かった。他のみんなも同じようだった。俺達は顔を見合わせた。同時に頷いて、安田の顔を見た。俺は安田と花瓶に一歩近付いた。

2005/3/9 Wed

 ミニッツメイドを飲みに行こう

 寝て覚めてを繰り返して、起きたのは午後の二時頃。ううむ。またよく寝てしまいました。今日も天気は良い。ご飯と納豆を食べる。どうも体調があまり良くない。花粉のせいだろうか。長いこと横になってぼーっとしている。あまり気分は良くない。やれやれ。ちょっと外に出て、すぐに戻ってくる。またしばらくぼーっとしている。自分には時間を無駄に浪費する才能がある気がする。八時頃に部屋を出て、町屋の BLDY で夕食を取る。パンと鶏肉のステーキとクリーム白玉あんみつを食べた。あとドリンクバー。買い物を済ませて、部屋に戻ってきたのは十時半頃。しばらくぼーっとしている。お風呂に入って、お茶漬けを食べる。またちょっとぼーっとしている。ワインを飲んでサツマイモのお菓子を食べて、パソコンに向かってぼーっとしている。気分は悪くない。
 寝たのは四時頃でした。メモ。今月の二十一日はバイトで、六月の二十四日はバイトお休み。三ヵ月後か、遠いなあ。まるで覚えていられる気がしない。この全身に漲るような確信は何だろう。

[ 花瓶 ] 065:花瓶に夢や希望を入れない

 夢や希望なんか持つものじゃないんです。あれは悪魔の罠なんですよ。夢や希望なんて、言ってしまえば、高望みや欲張りのことじゃないですか。世の中はどうしようもない馬鹿ばかりですね。有名な画家になりたい、幸せな家庭を築きたい、憧れのレストランに行きたい、ブランド物の洋服を着たい、平和な一生を送りたい。どれも身の程知らずの甘ったれじゃないですか。罠に引っ掛かって抜け出せないでいるのに、そのことに気付いてさえいない。悪魔が架けた梯子を上って辿り着くはずもない高みを目指して、そしてある日悪魔の気紛れで簡単に梯子は外されるんですよ。地の底へまっさかさまに落ちていくんです。哀れですよね。絵描きにはなれず、一家は離散して、残飯を食べ歩き、ぼろぼろの服を着て、虫けらのように死んでいく。私はみんなとは違います。私は悪魔の罠なんかには引っ掛からない。私は私の歩くべき道を謙虚に歩いていきます。悪魔が囁いてきても絶対に返事なんかしません。聞こえない振りをして、見えない振りをして、振り切ってしまえばいいんです。だけど、それでも夢や希望はとても甘く優しいもので、私の心に吸い付いてくるんです。分かっています。悪魔はいつだって、可愛い女の子の姿をして、油断と同情を引き寄せるものなんです。だから私は、夢や希望が自分の背後に忍び寄ってきたら、それらを捕まえて花瓶の中に仕舞い込んできたんです。子供の頃からもう何十年もそれを続けてきたんです。私が大切にしているこの花瓶には、もう何百何千もの私の夢や希望が詰め込まれているんです。でも、それももう限界が来たのかも知れません。もうこれ以上は入らないんです。どうやっても入らないんですよ。これ以上入れたら割れちゃうんです。どうしてですか。私はただ謙虚に生きていきたかっただけなのに。もし花瓶が割れてしまったら、私は一体どうなってしまうんですか。毎日が本当に怖くて怖くて仕方ないんです。私だって、心打つ絵を描く画家になりたかった、仲の良い娘と優しい夫が欲しかった、美味しいディナーを食べたかった、素敵な青いドレスを着たかった、平和で平和な一生を送りたかった。そう言い出せなかっただけなのに。悪魔なのかも知れないけれど、女の子を抱き締めることもできずに、ただこの花瓶に封じ込めてきて。お母様。

2005/3/10 Thu

 光の粒は本当に怖いです

 午前の十時半頃に起きるものの、どうも気分が悪くてまた寝てしまう。きちんと起きたのは一時過ぎ。天気は悪くない。しばらくぼーっとしている。ご飯と納豆を食べて、お掃除をする。部屋を出たのは二時半頃。自転車で西日暮里、電車で代々木上原、歩いて研究所。コーヒーを飲んでお菓子を食べる。しばらくぼーっとしている。計算をする。バイトの同僚の方にメールを出そうとして、宛先を間違えて恥ずかしい思いをする。あわわ。失礼しました。
 日記を書きます。十時半。どうも落ち着かない。妙に焦っているような感覚がある。ううむ。まあ帰りますかね。

 研究所を出て、歩いて代々木上原、電車で西日暮里、自転車で部屋。夕食を取る。ご飯、納豆、カボチャのポタージュ、ゴボウとキノコの煮物。なかなか美味しい夕食でした。しばらくぼーっとしている。お風呂に入る。光の粒が見えてびっくりする。十秒間くらい続いていた。嫌だなあ。怖いもので。林檎を食べる。しばらくぼーっとしている。パソコンに向かう。
 寝たのは四時過ぎでした。空気が乾燥しているのか花粉が飛び回っているのか、喉が乾いて仕方ない。

[ 研究 ] 計算をする

 基礎方程式に TS を導入して形を書き換えたところまで。子供の手慰みのような計算だ。粘性項はきちんと三つとも残しておくことにする。処理が面倒臭そうだけど、まあ切り捨てることなら後からでもできるので。

[ 花瓶 ] 066:花瓶に火薬を入れない

 深夜まで研究室に残っていたら、坂井さんが大量の花火を買い込んできた。なんでも爆弾を作りたいらしい。僕はちょっと呆れてしまったけれど、まあ面白そうなので見ていることにした。坂井さんは慣れた手付きで花火を分解して、中に入っていた火薬を取り出していく。広げた新聞紙の上に落として火薬の山を作る。こんなことして危なくないのかなと思ったけれど、余計なことのような気がしたので口には出さなかった。坂井さんは全部の花火を分解してしまうと、大きく息を吐いて上を向いた。いや、疲れたね、コーヒーでも飲もうか。はい。僕はコーヒーメーカーに向かった。研究室ではいつも僕がコーヒーを入れることになっていた。コーヒーカップ二つを持って戻ると、坂井さんはソファの背に大きくもたれかかっていた。火薬と新聞紙はテーブルの上にあった。はい、コーヒーです。ありがとう。坂井さんが、ずず、とコーヒーを飲んだので、僕も、ずず、とコーヒーを飲んだ。僕は素人だからよく分からないんですけど、どうやって爆弾を作るんですか。うん、火薬を一箇所に集めて導火線を使って火を付ければいいんじゃないかな。もしかして、爆弾の作り方、知らないんですか。知らないよ、あたしはあれを壊したいだけだもの。坂井さんは自分のデスクの方を指差した。そこには花瓶があった。誕生日に彼氏が買ってくれたのだと自慢げに話していた花瓶だ。火薬を入れて、導火線を用意する、あとは河原で火を付けるだけだよ。なるほど、と僕は頷いた。終わったら飲みに行くから、付き合ってくれるね。分かりました。そして僕達は押し黙って、ずず、とコーヒーを飲み続けた。

2005/3/11 Fri

 サーモンムニエルと鯖の味噌煮

 起きたのは午後の二時半頃。またよく寝てしまった。あまり天気は良くない。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。新しい曲が思い付いたけど、使い物になるのかどうか。しばらくぼーっとして、計算する。のんびり過ごしています。部屋を出たのは七時頃。自転車で鶯谷。松屋で夕食。電車で秋葉原、小岩。八時から十二時までピアノのお仕事。ジャズや自作や即興を弾く。よく弾いている即興の曲があるのだけど、タイトルがないのも悲しいので「サーモンムニエルの作り方」という名前を与える。僕は人生が楽しくて仕方ないですよ。これからはサーモンムニエルが作られていくところを想像しながら弾くことにしよう。休み時間には本を読む。
 お仕事を終えて、電車で秋葉原、鶯谷、自転車で部屋。途中、酒屋で鯖の味噌煮の缶詰とお酒を買っていく。部屋では夜食を取る。ご飯、納豆、カボチャのポタージュ。しばらくぼーっとして、お風呂に入る。鯖の味噌煮を食べて、お酒を飲む。パソコンに向かってぼーっとしている。悪くない時間である。
 寝たのは四時頃でした。鯖の味噌煮が好きです。大好きです。あんなに美味しいものはなかなか珍しいですよ。

[ 研究 ] 計算をする、メモ

 フーリエ変換したところまで。遅い遅い。次は揺らぎの展開か。
 分かったことをメモ。普通の HD 乱流における TSDIA では、スケールパラメータ展開によって出てくる最低次の式が平均量を含まず、速度場の最低次を一様等方として取り扱うことができるので、解析が容易になるという事情がある。しかし MHD 乱流では決してそう簡単にはいかず、速度場と磁場の最低次の式に磁場の平均量が含まれてしまう。これは平均場に乗ったフーリエ変換では速度場の平均量は打ち消せても磁場の平均量は打ち消せないためなのだけど、このために場の最低次を更に磁場の平均量によって展開しなければならない。つまり二重の展開が必要となる。今まで散々ボスに言われてきたことではあったけど、自分の言葉にしてやっとこのことが飲み込めた気がする。
 しかし思うに、現行のモデルよりも良い性能のモデルが存在することを前提として僕は研究をするわけだけど、考えてみればそんなものが存在する保証はどこにもないわけで、言ってしまえばこれはある種の信仰のようなものなのかも知れない。しかし、もしも計算機のアーキテクチャやコーディングの技術が向上しなければ現状よりも良い計算結果が出せないのなら、それはあまりにも悲しすぎる。
 本当に、絶望的なくらいに頭のいい人間が現れて、絶望的なくらいに頭のいい方法を考えて、これまでの計算がすべて白紙になるところを見たいものである。したがってエネルギースペクトルのディシペイションレンジは次の超関数とワイエルシュトラスのペー関数の畳み込みで書けるわけです、何か質問は、とか言うに違いない。どこかの係数には見たこともない超越数が出てくるんだ。

[ 花瓶 ] 067:花瓶に涙を入れない

 女神様はハンスに言いました。いいかい、今お前に渡した花瓶、それが満杯になるまで涙を掻き集めるんだ。ただし、お前自身の涙だけは決して入れてはならない。必ず他人の涙だけを集めるんだよ、いいね。もしも一年以内に花瓶を満杯にできたのなら、お前を永遠に年を取らない者にしてあげる。その日からハンスの旅が始まったのです。ハンスは来る日も来る日も他人の涙を探して歩き続けました。何十もの見知らぬ土地を訪れ、何百もの見知らぬ門戸を叩き、何千もの見知らぬ人々に話し掛けました。ハンスの物語はいつも悲しく美しいものばかりで、聞く人は涙せずにはいられませんでした。その零れ落ちた涙をハンスはすかさず花瓶の中に入れるのです。そして丁重に御礼を言うと、また次の相手を探すのでした。一日として休むことなく、ハンスは人々の涙を集め続けました。晴れの日には涙が飛んでいかないように、雨の日には雨粒が入り込まないように、涙を入れる瞬間以外は決して花瓶の蓋を外そうとはしませんでした。やがて季節が一回りして、約束のときが近付いてきました。どちらももう少しでした。もう少しで花瓶は涙で満杯になるのでした。しかしこれ以上ハンスには涙を集めることができませんでした。人々はもうハンスの話に聞き飽きていて、涙を流すどころか耳を傾けようともしないのです。ハンスは焦りました。しかしどうやっても涙を集めることができません。ハンスは泣きました。そして約束の日の朝となり、ハンスが女神様のところに戻ってきても、花瓶は満杯ではありませんでした。おやおや、ハンス、お前も無理だったのかね。いや、まだ少しだけ時間があります。ほう、まあ確かにね、しかし涙を流す者もここにはいないではないか。いいえ、います。はは、忘れたのかい、お前の涙は決して入れてはならないのだよ。違います、女神様、涙を流すのはあなたです。そしてハンスは悲しく美しい話を始めました。それは疑いようもなく、人間の言葉で語ることのできる、最高の物語でした。果たして女神様の目からは涙が零れ落ちたのです。しかしそれを花瓶に入れることはできませんでした。ハンスもまた、自らの語りに滂沱と涙が流れ落ち、花瓶の蓋を開けることができなかったのです。そしてハンスは全身の力を失って崩れ落ち、花瓶は地に落ちて割れてしまいました。涙が溢れました。女神様はハンスに言いました。勝負は私の勝ちだが、ハンス、お前には負けたよ。お前を永遠に年を取らない者にはしてあげられないが、代わりにお前を一生幸せな者にしてあげる。そして女神様は消え去り、二度と現れることはありませんでした。ハンスが幸せな余生を過ごしたのかどうかは、今となっては明らかではありません。

2005/3/12 Sat

 切り分けるということ

 十時半頃に起きて、長いことぼーっとしている。眠くて仕方ない。洗濯をする。部屋を出て、ちょっと散歩する。芋羊羹を買う。ペットショップの前にいた犬に遊んでもらう。近所のスーパーで買い物をする。部屋に戻って芋羊羹を食べる。ううむ、これは羊羹じゃないなあ。昼食を取る。ご飯、納豆、餃子。餃子が好きです。しばらくぼーっとしている。小雨が降り出して、すぐに止む。部屋を出たのは三時頃。上野に行ってくる。七時前には戻る。お菓子を食べる。また外に出て自転車に乗って、西日暮里の不二家でケーキを買う。部屋に戻って、夕食を取る。紅茶とケーキと林檎。甘い夕食でした。パソコンに向かってのんびりしている。お腹が空いたのでご飯と納豆を食べる。シャワーを浴びる。林檎を食べて、しばらくぼーっとしている。
 寝たのは四時頃でした。ペットショップといえばやはり、村上春樹の「1973年のピンボール」の第十二章ですね。あの章は後半が名文ばかりで実に素晴らしいのですが、なかなか前半の文章にも味があって悪くないですよ。あの店員は僕の中では男性です。

[ 外出 ] 自転車で上野に行く

 部屋を出て、自転車に乗る。西日暮里、千駄木、根津、湯島。上野公園でしばらくぼーっとしている。御徒町に行き、松坂屋の地下の食品売り場を歩く。羊羹を食べたかったのだけど、高くてちょっと手が出せなかった。外に出てベローチェでコーヒーを飲んでクッキーを食べる。しばらくぼーっとしている。帰ることにする。昭和通りから明治通り。町屋のコージーコーナーに寄ってから部屋に戻ります。

[ 食事 ] コージーコーナーのポップコージーを食べる

 ふわふわしたスポンジケーキの中にカスタードクリームが入っている。スポンジがふわふわしているのが良いですね。なかなか美味しかったけど、もうちょっとクリームが欲しかったかな。

[ 食事 ] 不二家のケーキを食べる

 ロールケーキとアップルパイを食べる。どちらもとても美味しいケーキでした。

[ 花瓶 ] 068:花瓶に血を入れない

 なあ、ひとつ私と賭けをしようじゃないか。君はこのナイフを使って自分の皮膚の一部を切り裂くんだ。指先でも首筋でも、どこでもいい、好きにしたまえ。傷口からは血が出てくることだろう。その血液をこの花瓶の中に入れるんだ。もしも一時間以内にこの花瓶を君の血で満杯にすることができたのなら、私は君に一生遊んで暮らせるだけの財産を与えようじゃないか。どうだい、やるかね。俺は大きく頷いた。ナイフを受け取ると、小さく息を吸い、手首を軽く切った。赤い血が噴き出す。奴は嬉しそうに笑っている。俺が間抜けに死んでいくところを見たがっているのだ。このサディストが。そうはさせるか。手首からは血が落ちて、花瓶の中に入っていく。俺はじっとその様子を眺めていた。どろりとした時間が流れていった。血液はまだ花瓶の半分くらいしか溜まっていないのに、俺はもう気を失いそうになっていた。新しい傷口を作るときだけ明晰な意識を取り戻すことができた。馬鹿だなあ君は、と奴が言った。何も死ぬことはないじゃないか。何を言ってんだ。命あっての物種というだろう。この野郎。一個の生命は地球よりも重いんだよ。俺の命に値札を付けたのは手前の方じゃねえか。止めるなら今のうちだけどね。誰が止めるか。奴が能弁を垂れている間、俺はひたすら黙り続けていた。可愛い妻と子供達のことを考えていた。あいつらを飢え死にさせるわけにはいかないんだよ。俺は花瓶に落ちる血を見ていた。やがて奴も口を閉ざした。一分と一秒が区別できない、死んだ時間が流れていった。俺は新しい傷口を作った。あと少しで花瓶は満杯になる。俺は確信を持った。大丈夫だ。俺は死なない。賭けは俺の勝ちだ。馬鹿だなあ君は、と奴が言った。後ろから音がした。そして俺の背中を熱いものが走り、花瓶は誰かに蹴り飛ばされて割れた。

2005/3/13 Sun

 ホイップクリームの日曜日

 起きたのは午後の一時半頃。やれやれ。天気は悪くない。しばらくぼーっとして、洗濯をする。近所のスーパーに行って買い物をする。それからコンビニで公共料金を支払って、町屋の SHOP99 で買い物をする。部屋ではしばらくぼーっとしている。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。相変わらず怠惰だなあ自分。六時頃に部屋を出て、一時間ほど散歩してくる。裏道から日暮里の駅前に出て、谷中銀座を通り、西日暮里の駅前から裏道を通って部屋に戻った。夕食を取る。ご飯とお惣菜。なかなか贅沢な食事であった。しばらくぼーっとしている。洗い物を済ませて、パソコンに向かう。シャワーを浴びる。
 日記を書きます。十時半。そろそろ先週分の「ガキ」を見ないといけない。

 今週の「ガキ」を見て、先週の「ガキ」を見る。電子ピアノに向かう。なかなか楽しいもので。
 日記を書きます。零時半。ケーキを食べよう。そうしよう。

 ケーキを食べて、お茶を飲む。ちょっと食べ過ぎてしまった。ノートパソコンに向かってぼーっとしている。
 寝たのは四時頃でした。今日はいつも以上に怠惰な一日でしたけれど、まあそういう日も悪くはないものですよ、多分。明日からはまた研究をがんばろう。スケールパラメータ展開して、非ソレノイダルな部分を分離させよう。

[ 食事 ] 谷中銀座で買ったお惣菜を食べる

 ゲソの唐揚げ、野菜コロッケ、イカのフライ、ハンバーグ。ゲソの唐揚げは揚げ立てを食べたのだけど、実に美味しかった。こういう食べ物は出来立てを食べるのが一番ですね。他は夕食のおかずに。どれも美味しいものばかり。ハンバーグは魚のすり身のような肉であった。コロッケは懐かしい味で良いです。

[ ガキ ] 山崎VSモリマン 魂のリベンジマッチ 後半

 先週分。
 まずは、ダイナマイト四国VSエスカルゴマン。何故かBGMがBOOWYであった。仲居さん、ポイント高すぎだよ。山田さん、ポイント高すぎだよ。ああ、またもや肉離れ。
 全身梱包対決、ポ頭2:00乱入、万国旗出されたら負けよ対決、小豆ふくんでビンタ対決、熱々あんかけ対決、山崎逃走、菅プロデューサーの締め。やはり山崎の惨敗であった。いつだって2+2は4なのです。

[ ガキ ] お揃いの衣装でトークをする二人

 今週はトークのみ。予告通りにお揃いの衣装で出てきたお二人でありました。
 電化製品に関する愚痴、歯医者でアーの代わりにアイーン、スライムとの戦い方、ボケレージが貯まっていく、死んだ人達は何になるのか、マンダムという肉の焼き方。スライムが良かったですね。しかし松本さん、どうしてそんなに捨て身のボケが多いんですか。いや、面白いからいいんだけどさ。

[ 食事 ] ケーキを食べる

 スポンジ、クリーム、蜜柑。とても美味しいケーキでしたよ。どうでもいいんですけど、カットケーキのカットって過去分詞なんですね。考えるまで気が付かなかった。間抜けだ。

[ 花瓶 ] 069:花瓶に縫いぐるみを入れない

 部屋に戻ると熊の縫いぐるみが花瓶の中に入っていた。花瓶には穴が開けられていて、そこから両手両足が飛び出していた。頭は花瓶の口の上にあった。私は溜息を吐いた。兄の仕業だ。間違いない。私の兄は少しばかり常識と非常識の境目があやふやになっている方で、よくおかしな真似をしては私達を困らせている。まあその非常識な行動が、食パンの間に白瓜の奈良漬を挟んで食べるとか、靴紐の代わりに断線した電気コードを使うとか、そういった自己完結的なものであるなら別に私も腹を立てたりはしない。兄の人生は兄の人生で、私の人生は私の人生だ。兄が恥を掻こうと首を括ろうと知ったことではない。しかしこの縫いぐるみは私の縫いぐるみで、この花瓶は私の花瓶である。他人が勝手にどうにかすることは許されていない。私は縫いぐるみを花瓶から引き抜こうとした。しかし全力で引っ張ったのにも関わらず、熊は少しも動こうとはしなかった。もしこれ以上の力で熊を引っ張ったとしたら、きっと首が千切れてしまうことだろう。私は花瓶を諦めることにした。花瓶よりも熊の方が大切だ。私は花瓶と縫いぐるみを持って庭に出た。石に向かって構える。夜空を見上げると月がとてもきれいだった。しかし兄はどうやって縫いぐるみを花瓶の中に入れたのだろうか。もしかしたらあの兄は、常人を遥かに凌駕した暴力性を持っていて、それを解消するために奇矯な振る舞いを続けているのだろうか。私は兄のことがまたひとつ怖くなった。そして熊の真っ黒な目が少し憎らしくなった。

2005/3/14 Mon

 「持つべき者は自分だ」って使えそうだな

 起きたのは十二時半頃。相変わらずよく寝ている自分である。しばらくぼーっとしている。部屋を出たのは二時頃。自転車で西日暮里、電車で代々木上原。松屋で昼食を取る。銀行の ATM で家賃を振り込む。歩いて研究所。コーヒーを飲む。ボスと少し議論する。計算をする。楽しい。
 日記を書きます。六時半。明日にでも本郷に行って奨学金の案内を見てこよう。

 計算をする。楽しい。お腹が空いたのでアンパンを買って食べる。
 日記を書きます。九時半。帰ります。去年の自分の計算に助けられました。持つべき者は自分です。

 走って代々木上原、電車で西日暮里。車内では計算している。自転車で部屋。夕食を取る。ご飯、納豆、お味噌汁、カレイの煮物、ゴボウの煮物。洗い物を済ませて、キッチンの掃除をする。しばらくぼーっとしている。お風呂に入る。計算をする。コンビニに行ってお菓子を買ってくる。
 日記を書きます。三時。計算なんてやればどこでもできるものですね。

 お菓子を食べて、ぼーっとしている。今日は徹夜することにする。

[ 研究 ] 計算をする

 コリオリ力を導入。式を変形して大先生の本と比較して、ミスがないことを確認する。スケールパラメータ展開して、波数と内積を取って圧力を消去。速度場と磁場の非対称性が気持ち悪い。コリオリ力と圧力。これでは Elsasser の変数を使いたくなるのも道理というものだ。スケールパラメータに関して零次の方程式と一次の方程式を立てて、ソレノイダルな部分に関する式を立てる。ここが厄介。テンソルの対称性に気を付ける。非線形項も落とさずに丁寧に取り扱うことにする。余計なことばかりしているような気もするけれど、まあ適当過ぎるよりは慎重過ぎる方が良いだろう。
 そういえば磁場の零次の方程式には圧力がないのだから、わざわざ solenoidal projection operator を作用させる必要はないのだけど、別に作用させても構わないわけで、むしろその方が統一的に方程式を書けるような気がする。そして面白いのが、この操作によって非線形項が速度場の場合と違って初めから solenoidal であることが分かるのだけど、そのことは決して自明ではないということだ。まあとにかく非線形項に関して、速度場の場合は対称テンソルと対称テンソルの積、磁場の場合は反対称テンソルと反対称テンソルの積、といった構造が明確になって非常に面白い。これは更に高次の場合を考えてもやはり常に成立する気がするのだけど、どうだろう。
 次はグリーン関数の導入。涙が出るほど厄介な式が出てくるのは想像に難くありません。望むところだ。

[ 花瓶 ] 070:花瓶に詫びを入れない

 いや、だから何度も済みませんでしたって言っているじゃないですか。肩がぶつかってごめんなさいねって。どうして何も答えてくれないんですか。そりゃ悪いのは僕かも知れませんけど、少しくらいは何か言ってくれたっていいのに。全く、あなたは冷たい人ですね。ちょっと身体にさわってもいいですか。うわ、本当に冷たいんですね。びっくりしましたよ。まるで血が通っていないみたいじゃないですか。あ、いや、誤解しないで下さいね。別にあなたが血も涙もない奴だとか冷酷無比な人非人だとか、そういうことが言いたいわけじゃないんです。あ、また言っちゃった。済みません済みません。僕は思い付いたことを何でも口に出しちゃうんです。この間もね、聞いて下さいよ、街を歩いていたら凄い人が通り掛かってきましてね。イソギンチャクとフラミンゴとピンクパンサーを足して三で割ったような人なんですよ。いや、本当に。それで僕がその人を見て思わず、うわ、イソギンチャクとフラミンゴとピンクパンサーを足した三で割ったような人だって言ったら、その人、急に泣き出しちゃって。そんなことで泣くなんて、どうかしてますよね。隣にいた女の人は逆に怒り出すし。もう大騒ぎですよ。最後には警察まで出てきましてね。散々怒られました。大変だったんですよ。分かるでしょう。ねえ、何とか言って下さいよ。言って下さいって。無口なんですね。そんなに僕を無視して楽しいですか。僕、本気で怒りますよ。僕が本気で怒ったら怖いんですよ。僕のパンチ、強烈なんですからね。もし食らったらプロレスラーでも一発でノックダウンですよ。いいんですか。殴られてもいいんですか。良くないなら何か言ったらどうですか。ははあ。あなたは本気で僕を怒らせたいんですね。いいでしょう。降りかかる火の粉は払わねばなりません。かかってきなさい。来い。おや、どうして来ないんですか。怖じ気付いたのかな。来ないならこっちから行きますよ。死ね、村岡。

2005/3/15 Tue

 真夜中のクロスワードパズル

 寝ていない。ひたすらぼーっとしている。やがてパソコンに向かう。ひたすらぼーっとしている。完全にダメ人間である。洗い物を済ませる。午後の六時頃に部屋を出る。キシピ氏の部屋に行ってくる。お泊まり。
 寝たのは午前四時頃でした。口の中がざらざらしている。煙草でも食べたんですかね。

[ 外出 ] キシピ氏の部屋に行く

 部屋を出て、自転車で西日暮里、電車で湯島。キシピ氏と待ち合わせ。一風堂に行き、夕食を取る。秋葉原まで歩き、ドンキホーテで THE SIMPSONS のポスターを買う。初めてこのポスターを見たのは一昨年のことでした。欲しくなったけどそのときは買えなかったのを覚えています。今は買えるので買いました。あとお酒とお菓子を買っていく。歩いて御茶ノ水。サンクレールで飲んで食べようとするものの、寒いので場所を変えることに。キシピ氏の部屋に行くことにする。コージーコーナーでチーズケーキを買っていく。キシピ氏と妹さんの卒業祝いに。
 新御茶ノ水から電車で大手町、門前仲町。キシピ氏の部屋へ。パソコンに向かって遊び、テレビを見ながらお酒を飲み、またパソコンに向かって遊ぶ。いつも通りに怠惰な時間を過ごさせて頂きました。チーズケーキはなかなか美味しかった。妹さんはイチゴのショートケーキは好きだけど、そこに入っているイチゴは嫌いらしい。それはイチゴのショートケーキが好きだと言えるのだろうか。ゲームやパズルでのんびり遊ぶ。楽しい時間である。
 キシピ氏の部屋で寝ます。やはり「サウス・パーク」はいいなあ。ケニー最高。

[ 食事 ] 上野広小路「一風堂」に行く

 隣がらーめん山頭火なのが笑える。確執があるんだかないんだか。
 白丸肉入りと替玉。満腹です。やはりここのラーメンはとても美味しいですね。豚骨スープも細い麺も実に良い。チャーシューが以前より硬い気がしますけど、これも歯応えがあって美味しいですね。付け合わせのもやしも良い。若干難点を言うとすれば、食べた後ちょっと胃に残るところでしょうか。
 一風堂は駒場の頃によく明大前や吉祥寺のお店に行っていました。懐かしい限りで。また食べたいですね。

[ 花瓶 ] 071:花瓶に物差しを入れない

 算数の宿題は、何か身近なものの長さを測ってくることだった。出題の意図がよく分からないが、まあ宿題というのは概してそういうものである。やっと部屋に戻った私は、ランドセルを下ろして物差しを取り出した。さて、何の長さを測ったものだろうか。私は考えた。あまり大きすぎるのは良くないし、小さすぎるのも良くない。そうだ、居間の隅にある花瓶がいいだろう。私は花瓶をテーブルまで運び、中に入っていたカスミソウをゴミ箱に捨て、物差しをゆっくり入れていくことにした。一ミリ。二ミリ。少しずつ物差しを下ろしていく。物差しは底なし沼に挑む命知らずの若者のように見えた。五ミリ。六ミリ。まだ物差しは底に着かない。思っていたよりも深いようだ。どこまで行くのだろうか。目盛りが十ミリを越えたところで、胸が普段とは違う音を立て始めた。何も問題はない、落ち着け。自分に言い聞かせる。十二ミリ。十三ミリ。私は大きく呼吸しながら、慎重に物差しを動かしていった。物差しの先には何の手掛かりもない。物差しは花瓶の底に向かって確実に進んでいく。とうとう物差しは二十ミリを越えてしまった。そんな馬鹿な。こんなの絶対におかしい。花瓶がそんなに深いわけないじゃないか。私は取り付かれたように物差しを下ろしていった。三十ミリ。物差しを手放してしまわないように、私は物差しを強く強く握り締めた。手のひらに食い込んで少し痛かったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。四十ミリ。呼吸が邪魔だった。鼓動を捨てたくなった。五十ミリを越えた。もうここは私の家ではなかった。六十ミリ。名前のない感情が私の心に巣食っていた。七十ミリ。恐怖。絶望。八十ミリ。どうして。私が。こんな目に。九十ミリ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。とうとう物差しは百ミリに差し掛かろうとしていた。この花瓶は、化け物だ。やっと気付いたのか、愚か者め。花瓶が突然大きな笑い声を上げた。私は驚いて物差しを手放した。乾いた音。急いで花瓶を床に突き落とす。花瓶は粉々に割れて死んだ。私は欠片を強く踏み付けた。不快な音が聞こえて、足の裏から血が出た。大きく息を吐く。椅子に座って、耳を澄ませた。壁掛け時計の音、近所の子供達の声、不明瞭な音楽。やっと戻ってくることができた。私は心底ほっとして、何気なく後ろを見た。ゴミ箱からカスミソウが私を見ていた。

2005/3/16 Wed

 美味しいワインを頂きました

 昼の十二時頃に起きる。喉が痛い。嫌だなあ。しばらくぼーっとして、カレーライスを頂く。カレーを作った本人はまだ寝ている。十二時半過ぎに部屋を出る。お邪魔しました。天気は良い。門前仲町から電車で大手町。キシピ氏と別れる。電車で西日暮里、自転車で部屋。壁にポスターを張る。どうもうまく張ることができない。しかし壁に画鋲を刺してしまったけど、大丈夫なのかな。しばらくぼーっとしている。シャワーを浴びて洗濯をして、部屋の片付けを済ませる。ご飯と納豆を食べる。
 八時前に自転車で西日暮里へ。仙台の友人と待ち合わせ。駅前の食堂で夕食を取る。カレーライスと鶏肉の揚げ物を食べた。なかなか美味しかった。スーパーで買い物してから部屋に戻ります。しばらくぼーっとして、お酒を飲んでお菓子を食べる。お土産に白ワインを頂いたのだけど、実に美味しかった。こんなに美味しいワインを飲んだのは初めてかも知れない。色々と話をする。食パンに蜂蜜を付けて食べる。
 寝たのは二時過ぎでした。明らかに食事の量が多すぎる。ううむ。食べ過ぎてしまうのは良くない癖である。

[ 研究 ] 訂正をする

 一昨日の日記で、磁場の非線形項が solenoidal なのは自明ではない、と書いたけど、決してそんなことはなかった。半対称テンソル A(i,j) に対して k(i)k(j)A(i,j) = 0 なのは自明ではないか。頭悪いなあ自分。きちんと証明を書いておくと k(i)k(j)A(i,j) = 1/2[k(i)k(j){A(i,j)-A(j,i)}] = 1/2[{k(i)k(j)-k(j)k(i)}A(i,j)] = 0 ですね。やれやれ。

[ 花瓶 ] 072:花瓶におたまじゃくしを入れない

 ちょっとお前の銃を貸してくれないか。いや、別に悪いことには使わないって。動物や人間は狙わないよ。生き物を傷付けて遊びたいわけじゃない。花瓶を割りたいんだ。理由ね、まあ話してもいいけど、あんまり気持ちのいい話じゃないからな。分かった、話すよ。もう何年も前の話なんだ。夏だったよ。俺の息子がおたまじゃくしを持って帰ってきたんだ。近くの田んぼで拾ってきたらしくてな。折角だから家で飼おうってことになって、水槽もなかったから水を張った花瓶の中に入れたんだよ。まあそこまでは良かったんだ。ただ俺にはちょっと子供を褒め過ぎるところがあってな、それが良くなかったんだろう。あいつ、調子に乗って物凄い量のおたまじゃくしを集めてきたんだよ。あれは一見の価値があるね。あいつはそれを全部花瓶の中に入れるんだ。そりゃもう、この世のものとは思えない光景だったよ。子供が見るもんじゃない。それで、まあ分かると思うけど、おたまじゃくしは成長すると蛙になるじゃないか。それが逃げ出さないようにって、あいつ、花瓶に金網を被せて固定したんだよ。今思うと、俺はそこで無理矢理にでも止めるべきだったんだな。俺は、あんまり気持ちがいいもんじゃないから、田んぼに放してやれよって言ったんだ。そしたら、あいつ、花瓶をどこかに隠したんだ。絶対に手放したくなかったんだな。俺がおたまじゃくしを捨てるとでも思ったんだろう。分かる気がするよ。問いただしても何も言いやしない。とうとう俺も諦めたんだ。子供に任せたっていいじゃないかって。それから、ずっと俺はその花瓶のことを忘れていた。もう何年も忘れていたんだ。あいつだってすっかり忘れていたに違いない。いや、きっとそうなんだ。昨日だよ、家の縁の下を覗いたら、何があったと思う。俺は、はっきり言って、あれに近付きたくない。何か遠くから奴らを解放する手段が今の俺には必要なんだ。

2005/3/17 Thu

 まあ僕は楽観的な人間ですよ

 朝の七時過ぎに起きる。眠いのでひたすらぼーっとしている。友人を見送る。チャーハンを作って食べる。満腹。しばらくぼーっとしている。パソコンに向かう。あまり気分は良くない。困ったものですね。部屋を出たのは二時頃。自転車で西日暮里、電車で代々木上原、歩いて研究所。コーヒーを飲んで、しばらくぼーっとして、のんびり計算をする。お腹が空いたのでパンを食べる。十時半頃に帰る。歩いて代々木上原、電車で西日暮里。本を読み終える。自転車で部屋に戻り、トーストを食べる。友人が戻ってくる。お茶を飲んで色々と話をする。
 寝たのは三時過ぎでした。計算はやっぱり楽しいですね。一生こんな風にのんびりゆるゆる暮らせたらいいなあ。

[ 研究 ] 計算をする

 外力がない場合に零次の方程式を満たす basic field を導入する。非線形項の取り扱いに気を付ける。テンソルの対称性あるいは反対称性から、非線形項にかかる演算子には自由度があって、今までは速度場でも磁場でも使えることから k(j)D(i,j) を使っていたのだけど、それだと一次の方程式と噛み合わないので、それぞれに合った演算子を用意する。これはまあ簡単。落ち着いて考えればそんなに難しいことじゃない。
 しかし速度場の方程式に出てくる、磁場の非線形項をどのように取り扱えば良いのかが分からない。今までグリーン関数は、運動方程式 Lu = f における L の逆演算子くらいのイメージだったのだけど、今回はそれだけでは片付かない。というのは、速度場と磁場それぞれが速度場と磁場それぞれに与える影響を考える必要があるから。四つのグリーン関数を導入しなければならず、そこが前に計算したときよりもちょっと厄介なところ。でもよく考えてみれば Elsasser の変数の場合でもこういった問題は水面下にあったわけで、形式的なことに囚われてそれを見過ごしていた自分が情けない限りである。
 とにかく、よく分かりません。明日ボスに聞くことにしよう。

[ 読書 ] 川端康成「伊豆の踊子」新潮文庫

 ゆっくり読みました。
 やはり「伊豆の踊子」は良いですね。出会いと別れ。美しくもほろ苦い、青春の物語です。いい話じゃないですか。風景や人々の鮮やかな描写も素晴らしいのですが、何よりも人間の優しさという好意というか、漠然とした善意のようなものを感じさせてくれる小説です。まあそういったものに触れることで、凝り固まっていた観念から解放されることで、人間は大人になるものなのかも知れませんね。そういった意味で僕はこの作品から、映画「スタンド・バイ・ミー」に近いものを感じるのだけど、どうでしょうか。色々と対応関係が説明できるような気がする。

二十歳の私は自分の性質が孤児根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に堪え切れないで伊豆の旅に出て来ているのだった。だから、世間尋常の意味で自分がいい人に見えることは、言いようなく有難いのだった。

 しかし湯ヶ野の温泉宿で眠れなくなる場面は、言ってはなんだけどちょっと間抜けだ。いや、そこがいいんですけどね。分かりますよ。僕だってそういう間抜けな人間ですから。なんだか痛いような気もするところだ。やれやれ。
 他の短編は「温泉宿」と「抒情歌」と「禽獣」の三つ。どれもなかなか面白かったのですが、個人的に印象に残ったのは「温泉宿」ですね。女中達や娼婦達の話。誰もが複雑な事情を抱えながら、間に合わせの毎日を生きているのかも知れません。そして季節だけが淡々と移り変わっていくのです。それにしても、お滝さん、かっこいいなあ。こういうひとが身近にいたら面白そうだ。
 そうそう、作品の解説が三島由紀夫だったのですが、良くも悪くも文体が三島だなあと思いました。

No Image
伊豆の踊子』 文庫
新潮社(新潮文庫)
著者:川端 康成(著)
価格:\380, サイズ:16 cm

[ 花瓶 ] 073:花瓶にキャンディを入れない

 花瓶から手が抜けないんだよ。阿部は泣き出しそうな顔をしていた。左手で花瓶を持ち、右手は花瓶の中にあった。シュールな光景だ。一体どうしたんだ。花瓶にキャンディが入ってたんだよ。それを取ろうとして手を突っ込んだら、もうどうしても抜けないんだ。お願いだから助けてくれよ。俺は腕を組んで考え込んだ。もちろん阿部が握っているキャンディを手放せば、手は花瓶から抜けるに違いない。キャンディが欲しければ花瓶を逆さまにすればいい。それだけのことだ。しかし俺は真面目な顔をして言った。腕を切り落とすしかないな。俺は台所に向かった。大きな出刃包丁を取り出す。痛いかも知れないが、我慢してくれよ。ちょ、ちょっと待て。大丈夫だ、心配するなって、手当てはしてやる。そうじゃない。何だよ。本当に腕を切り落とすしかないのか、ちゃんと真剣に考えてくれよ。そうだな、腕を切り落とす以外の解決策か。俺は出刃包丁を軽く揺らしながら考えた。よし、指を切り落とそうか。なんでだ。分かった、足を切り落とそう。意味が分からない。それじゃ、頭を切り落とすか。お前はそんなに何かを切り落としたいのか。阿部は不機嫌そうに息を吐いた。もういい、花瓶を割るよ、それしかないだろう。阿部は机に向かって右手を上げた。興奮しているのか、呼吸が荒くなっていた。俺は心の中で舌打ちした。もうちょっと粘ってくれよ。つまらないな。誰が何のために花瓶にキャンディを入れておいたと思ってるんだ。

2005/3/18 Fri

 弟君が来るのは何ヶ月振りだろう

 十時過ぎに起きて、しばらくぼーっとしている。ちょっと喉が痛い。今日も天気は良い。部屋を出たのは十二時頃。歩いて西日暮里。友人と別れる。ではまた。電車で代々木上原。松屋で昼食を取る。歩いて研究所。コーヒーを飲む。一時半から四時頃まで研究室セミナー。しばらくぼーっとしている。ボスと話し合う。なるほど。
 七時前に研究所を出て、歩いて代々木上原、電車で新御茶ノ水、御茶ノ水から電車で小岩。コンビニでおにぎりと飲み物を買っていく。八時から十二時までピアノのお仕事。今日もまたジャズと即興と自作ばかり。決して調子は悪くなかったのだけど、右の手首がちょっと痛いのが気になる。嫌だなあ。休み時間には本を読んでいる。お仕事を終えて、電車で御茶ノ水、新御茶ノ水から電車で西日暮里、自転車で部屋に帰ります。トーストを食べる。やがて終電を逃した弟君がやってくる。お茶を飲む。折角なので「スヌーピーの大冒険」を見ることにする。
 寝たのは三時半頃でした。しかし友人が帰った日に弟君が泊まりに来るとはね。変な偶然。

[ 研究 ] 研究室セミナーで先輩の発表

 来週の物理学会で先輩がする発表の予行演習。統計理論による非線形渦粘性モデルの研究について。大先生が考案した TSDIA を用いたこれまでの理論計算では、チャネル流におけるレイノルズ応力の各対角成分の大小関係について、実際の実験や DNS の計算結果とは異なる結論が出ていたのだけど、先輩が考案した理論を用いればそのレイノルズ応力の大小関係がうまく説明でき、モデル定数も是正できる、といった内容。この研究は掘り下げていく価値がありそうだ。まあ発表に関して少し意見を述べさせてもらう。物理学会は来週の木曜ということなので、まあその日は野田まで行くことにしよう。理科大に行くのは初めてだ。
 物凄くどうでもいいのだけど RANS には人名が三つも入っているのだなあと感心した。正確には Reynolds averaged Navier-Stokes equation らしい。ただ Reynolds averaged Numerical Simulation だという説もあるとか。ややこしいなあ、全く。
 ボスと話し合い、グリーン関数について教えてもらう。そういうことですか。分かりました。まあ時間はかかるだろうけど、これで統計量の計算まではできるはず。個人的には Elsasser の変数でも同じ計算をして、両方の場合におけるグリーン関数の対応関係について考えたい。実は線形で書けるのではないか、という甘い考えを抱いている。あと欲を言えば、系の回転の効果が厳密にボスの予想する形になっているかどうかを確かめたい。これには多分グリーン関数の定義を焼き直す必要があって厄介なのだけど、もしできたら面白いのではなかろうか。
 とにかく、やるべきことは無数にある。素晴らしいことだ。

[ 花瓶 ] 074:花瓶に体温計を入れない

 風邪が完治して一週間も経つというのに、体温計は未だに花瓶の中にあった。わざわざ仕舞うのも面倒なので放置してしまっていたのだ。そもそも風邪で寝込んでいてあまりに暇だったので、ここはひとつ体温でも測ってやろうと思い立ち、押し入れの中を引っ掻き回して二時間ばかり宝探しをした挙句、段ボール箱の隅にあった緑色の小物入れの下敷きになっていた体温計を見付け出したのである。因みにそのときの体温は三十七度四分であった。なんて中途半端な。とにかく、折角苦労して見付けたのである、今更元の場所に戻す気にはなれない。どうせまた使うことになるのだ、手元にあった方が便利だろう。そう考えた。それからしばらくは何事もなかった。特に体温計は引っ張り出されることもなく、ひたすら花瓶の中で眠り続けていた。何を考えていたのかは分からない。きっと花瓶の体温でも測っていたのだろう。月日が流れた。そして、また風邪を引いてしまい、また体温でも測ろうと思い立ち、また二時間ばかり宝探しをした挙句、花瓶の中にあるのを思い出して取り出そうとしたとき、体温計の先が花瓶の口に引っ掛かって花瓶は倒れて割れた。

2005/3/19 Sat

 ひたすら緑茶を飲んでいる土曜日

 十二時前に起きる。今日も天気は良い。弟君はすぐに帰る。しばらくぼーっとしている。シャワーを浴びて、納豆を食べる。パソコンに向かったり漫画を読んだり。何もしない土曜日の午後である。まあこういうのも悪いものではない。五時頃に部屋を出て、スーパーで買い物をする。部屋に戻ってヨーグルトを食べる。またしばらくぼーっとしている。夕食を取る。ヤキソバと餃子。オイスターソースって良いですね。色々と使えそうだ。また長いことぼーっとしている。シャワーを浴びる。お腹が空いたのでクラッカーを食べる。
 寝たのは三時半頃でした。なんだか今日は異様なくらい緑茶を飲んでしまった。緑茶が好きです。

[ 花瓶 ] 075:花瓶にフランスパンを入れない

 残業を終えて満員電車に揺られて、コンビニでメロンパンとクリームパンを買い、やっと自分の部屋まで戻った私は、ドアに鍵が掛かっていないことに気が付いた。おかしい。私は割と神経質な人間なので、ドアの施錠は必ず確かめることにしている。どうしても気になってしまい、昼休みに職場から引き返したことがあるくらいだ。断言したっていい、今朝確かに私はドアの鍵を閉めた。しかし今こうして鍵は開いている。何故だ。私は恐る恐るドアを開けて中に入った。明かりをつけて、奥の部屋を覗く。何事もない。窓は割れていないし、クローゼットは開いていない。足跡は付いていないし、預金通帳は盗まれていない。良かった。きっとうっかりして鍵を掛け忘れていたのだろう。それだけのことだ。少し安心する。しかしまだ微かな違和感が残っていた。ハンバーガーに少しだけバニラエッセンスが入っていたような違和感だ。私はその違和感の正体を探るべく、机の引き出しを開け、蛇口からお湯を出し、床下収納を調べ、ビデオテープを再生した。そして、私は気付いた。キッチンの隅に置いていた花瓶の中に、フランスパンが入っていた。そのフランスパンは、昨日帰り道に駅前のパン屋さんで買って、少しだけ食べてテーブルの上に置いておいたものだ。それがどうして花瓶の中にあるのだろう。フランスパンは昨日私が食べたそのままの形で、他に誰かが食べた形跡は一切なかった。つまり、こういうことだろうか。誰かが私の部屋に忍び込み、フランスパンを花瓶の中に入れて帰った。私はどうしようもなく薄気味悪くなって、花瓶を蹴り倒して割り、テーブルでメロンパンとクリームパンとフランスパンを食べることにした。

2005/3/20 Sun

 二階微分方程式論は本当に大好きでした

 午後の二時半頃に起きる。またよく寝てしまった。しばらくぼーっとしている。納豆を食べる。のんびりしている日曜日です。四時過ぎに部屋を出て、自転車で西日暮里、電車で新御茶ノ水。丸善でキシピ氏と待ち合わせ。神保町に行く。洋書のお店で前々から探していた本を見付ける。Andy Riley の「THE BOOK OF BUNNY SUICIDES」と「RETURN OF THE BUNNY SUICIDES」です。欲しくなったけど、一冊1600円はちょっと出せないなあ。でも欲しい。いつか買うことにしよう。しばらく神保町を歩き、路地裏から御茶ノ水に戻る。コンビニでお酒を買い、神田明神に寄って、秋葉原に行く。輸入食品のお店でドライフルーツを買っていく。クランベリー。電気屋を色々と歩き回る。キシピ氏はマウスを買っていた。ジョナサンで夕食を取る。ラザニア、パフェ。ちょっと食べ過ぎてしまった。氏が泊まりに来ることに。三年前の数学のノートが見たいらしい。湯島まで歩き、電車で西日暮里、歩いて部屋。緑茶を飲む。キシピ氏が弾く電子ピアノを聴く。相変わらず飛ばしているなあ。お菓子を食べてのんびりしている。テレビに向かって「ガキ」を見る。エスニックなインスタントヌードルに挽肉とキャベツを入れて食べる。ちょっと辛かったけど美味しかった。ぼーっとしている。
 寝たのは五時頃でした。また遊んでしまった。しかし YMCK の「FAMILY MUSIC」は良いですね。素敵だ。

[ ガキ ] ガキの使い卒業 さよなら山崎邦正

 もうどうでもいいよ。菅プロデューサとココリコの贈る言葉、最高。裏方の皆さん、最高。
 前にも書いた気がするのだけど、この企画は最後の種明かしをしない方が面白いんじゃないかなあ。それで、来週には何事もなかったかのように山崎がいる。いるのにいないことになっている。代わりに適当なゲストが入って五人になる。山崎は少し後ろの方からその様子を見ている。というのはどうか。

[ 花瓶 ] 076:花瓶に霞を入れない

 この花瓶には霞が入っていましてね。その怪しげな男はいきなりそんなことを言い出してきた。よく晴れた日曜日の賑やかな公園で、僕は暇潰しにフリーマーケットを眺めていた。やがて僕は変なものばかりが置かれているビニールシートに気が付いた。大人の背丈くらいの長さがある万華鏡、指を入れるところが六つある手袋、グリップまで刃になっているナイフ、そんなものばかりだ。僕がそれらの珍品ひとつひとつを観察していると、そこに座っていた怪しげな男が話し掛けてきた。この花瓶には霞が入っていましてね。男は本当に怪しげな格好をしていた。会社員にも自衛隊員にも心理療法士にも見えなかった。浮浪者にも私立探偵にも前衛芸術家にも見えなかった。とにかく男は怪しげな格好をしていた。男の前には小さな花瓶があって、花瓶には紙とセロテープで封がされていた。中国のある高名な霊峰で集めてきた霞です。これを吸った人間はこの世のあらゆる煩悩から解放されて仙人になれると言われています。男はにやりと笑った。蝉のような顔だった。真偽のほどは確かではありませんがね。どうですか、ひとつ。胡散臭いなとは思いながらも、僕はその花瓶を手に取ってみた。中に何かが入っていて、軽く振ると乾いた音がした。どこか蚕の繭を思わせる感触だった。幾らですか。霞だけなら二千円、花瓶も買うなら二万円。高いな、花瓶。僕は特に仙人になりたくもなかったので、霞も花瓶も買わないことにした。男は残念そうな顔をした。蜥蜴のような表情だった。僕は男に背を向けて歩き出した。十秒後、後ろから花瓶の割れる音がした。

2005/3/21 Mon

 舌の付け根がぴりぴりします

 十一時頃に起きて、ちょっとぼーっとしている。シャワーを浴びて、洗濯をする。やがてキシピ氏も目を覚ます。しばらくぼーっとしている。昼食にヤキソバ風パスタを作って食べる。ヤキソバも入れた。ということはヤキソバ風パスタというよりは、パスタ入りヤキソバというべきだろうか。いや、別にどっちでもいいのだけど。お菓子を食べて、パソコンに向かう。部屋を出たのは四時半頃。歩いて三河島、鶯谷、上野、御徒町。五時半には末広町のガストに到着。クリームあんみつを食べる。秋葉原を通って御茶ノ水まで歩く。新御茶ノ水の駅でキシピ氏と別れる。ではまた。丸善で本を眺める。文庫本を一冊買う。
 御茶ノ水から電車で小岩。コンビニでおにぎりを買っていく。八時から十二時までピアノのお仕事。そこまで調子は良くない。ジャズが多かった気がする。疲れているときは自作が弾けなくなるものです。やっぱり弾いていて楽しいのはバッハだな。休み時間には本を読んでいる。お仕事を終えて、電車で秋葉原、鶯谷。歩いて帰ります。途中、安いラーメン屋さんでチャーハンを食べる。二百円だった。ありがたい。部屋に戻ってしばらくぼーっとしている。夕方に買った本を読み終える。
 寝たのは三時頃でした。どうも舌が痛くて仕方ない。きっと昨日今日とお菓子を食べ過ぎたせいだろう。

[ 読書 ] 日日日「ちーちゃんは悠久の向こう」新風舎文庫

 うーん、これは僕の好みじゃないですね。残念。

ちーちゃんは悠久の向こう ちーちゃんは悠久の向こう』 文庫
新風舎(新風舎文庫)
著者:日日日(著)
発売日:2005/02, 価格:\590, サイズ:15 cm

[ 花瓶 ] 077:花瓶に墨汁を入れない

 私が担当している先生は、必ず原稿用紙に毛筆で文章を書く、昨今には珍しい昔かたぎの文士である。その文字は書道の名人のように美しく丁寧で、一字一字に込められた思いを感じずにはいられない。初めのうちは私もその書き方を不合理に感じていたのだが、先生が文章を書くところを見ているうちにすっかり改心してしまった。字が整っていなければ心は整わず、心が整っていなければ文は整わない。きっとそういうことなのだろう。先生が集中して文章を書いているとき、私はよくその後ろで花瓶を持って待機している。花瓶には墨汁が入っているのである。先生はちょっと変わっていて、花瓶以外の容器には決して墨汁を入れない。硯を見ると怒り出すくらいだ。花瓶の墨汁に筆を濡らして文章を書き、ちょっとでも花瓶の墨汁が少なくなったと感じると、すぐに予備の花瓶と交換する。私は使い終わった花瓶を洗い、また墨汁を入れて、先生の後ろで待機する。こんなことが担当の仕事だとは思えないのだが、まあ先生のお手伝いをするのは苦痛ではない。しかし今日はまずかった。花瓶を洗っていた私は、うっかり手を滑らせてしまい、花瓶を割ってしまったのである。多分先生はまだ気付いていない。先生の集中力には恐ろしいものがあり、文章を書いているときは地震があっても火事があっても洪水があっても、全く動じることがないのである。文章の世界の中に完全に没頭しているか、あるいはこの世から抜け出しているのだろう。私は急いで外に飛び出して、近所の店で花瓶を買い、墨汁を用意した。先生の後ろに座る。先生は私の方を振り向いて言った。君、花瓶を割ったね。どうしてそれを。先生は薄く笑みを浮かべた。私は立ち上がった。先生の手元には、割れた花瓶と、墨汁で真っ黒になった原稿用紙があった。

2005/3/22 Tue

 まあそのうち怠惰にも飽きますよ

 お昼の一時頃に起きる。天気はあまり良くない。しばらくぼーっとしている。どうも身体の調子が悪いらしく、喉や頭が妙に痛い。花粉が悪いのか気圧が悪いのか。シャワーを浴びる。昼食を取る。茹でたパスタとキャベツをインスタントのスープで煮込んだ。なかなか美味しかった。どうもだるいので、のんびりしている。何もしない平日である。ダメだなあ自分。やがて夜になって、スーパーで買い物をする。またちょっとぼーっとして、夕食を取る。挽肉、タマネギ、茹でたパスタを炒めて、適当に味付けをした。カレー粉はこういうときに便利だ。もっと野菜が欲しいなあ。どうもくらくらして仕方ない。
 寝たのは十二時頃でした。今日は十一時間しか活動していない。怠惰だ。怠惰だ。

[ 花瓶 ] 078:花瓶に醤油を入れない

 醤油の瓶を割ってしまった。酒瓶やジュースの瓶や牛乳瓶など、手頃な瓶を大量に集めて趣味のドミノ倒しをしていたら、机の上から落ちた醤油の瓶が割れてしまったのである。机の上から落ちるところまでは予定通りであったが、割れてしまうのは流石に計算外であった。更に運の悪いことに醤油の瓶にはまだ中身が残っていた。こぼれた醤油を雑巾で拭き取ったのは良いものの、問題はまだ瓶の中に残っている醤油である。どうやら割れた瓶の破片は入り込んでいないようなので、中身を近くにあった花瓶に移し変えることにした。これで良し。ドミノ倒しを再開しよう。しかし醤油の瓶が割れてしまったために、机の上から落ちる役回りの瓶がなくなってしまった。これでは全体の三分の一しか倒すことができないではないか。仕方ない、代わりを使うことにしよう。机の端に花瓶が置かれた。花瓶も瓶には違いない。再開だ。指先で先頭の瓶を倒す。瓶がどんどん倒れていく。花瓶が倒される。机から落ちる。醤油が飛び散る。

2005/3/23 Wed

 最近よく ACIDMAN を聴いています

 十時半頃に起きて、長いことぼーっとしている。喉の調子があまり良くない。シャワーを浴びる。部屋を出たのは一時半頃。小雨が降っている。歩いて町屋。おにぎりとパンを買う。電車で代々木上原、歩いて研究所。コーヒーを飲んでぼーっとしている。計算。クラッカーを食べる。研究所を出たのは九時半頃。歩いて代々木上原、電車で町屋。おにぎりを買って食べる。歩いて帰る。部屋ではひたすらぼーっとしている。あまり気分は良くない。
 寝たのは四時半頃でした。しかし ACIDMAN の「Your Song」は本当にいい曲ですね。元気が出るのを通り越して、落ち込んでしまうくらいいい曲です。

[ 研究 ] 計算をする

 グリーン関数を使って零次の形式解を作る。チェックしてみると確かに解になっている。なるほど。ゆっくり考えて理解する。面白いなあ。次は一次の形式解か。ルーチンワークだ。

[ 花瓶 ] 079:花瓶にクッキーアイスを入れない

 雪合戦をすることになったので、僕は花瓶にクッキーアイスを詰め込んで、大きめのスプーンを握り締めた。台所から居間に顔を出すと、急にコーヒーアイスが飛んできた。慌ててよける。壁に茶色いアイスが広がった。妹は壺を抱えて居間の中央で仁王立ちしていた。左手には僕のと同じ大きめのスプーンがあった。僕もスプーンでクッキーアイスをすくい出して、妹に向かって投げ付けた。妹はそれをひらりとかわして、またコーヒーアイスの砲弾を飛ばしてくる。僕はソファの裏に回ってそれを防ぐ。クッキーアイスとコーヒーアイス。戦力は五分五分といったところだろう。僕はソファに隠れながらクッキーアイスの砲撃を続けた。しかしどうも命中はしていないようだ。相変わらず妹の顔は白く、髪は黒くて、どこにもクッキーのひとかけらも付いていなかった。このままでは弾丸が尽きるのも時間の問題だ。うまく節約しながら、少しずつクッキーアイスで攻撃するものの、効果は実に空しい。とうとう花瓶のクッキーアイスがなくなったので、仕方なく僕は花瓶を投げ付けた。妹も壺を投げ付けてきたところだった。花瓶と壺。やはり勝負はどこまでも互角だ。雪合戦はとても楽しい。

2005/3/24 Thu

 ちょっと学会に行ってきました

 十時過ぎに起きる。しばらくぼーっとしている。天気は悪くない。シャワーを浴びて、洗濯をする。昼食を取る。挽肉、タマネギ、茹でたパスタを炒めて、調味料で味付け。いい加減な食事だ。十二時半頃に部屋を出る。東京理科大学に行ってくる。部屋に戻ってきたのは七時半頃。しばらくぼーっとしている。ヨーグルトを食べる。雨が降り出してくる。夕食にミソラーメンを食べる。具は、挽肉、万能ネギ、エリンギを炒めたもの。なかなか悪くないラーメンであった。考え事をする。ちょっと落ち込んでしまい、左の胸が痛くなる。嫌だなあ。痛いのは苦手です。
 寝たのは三時過ぎでした。携帯電話の二月分の料金明細が来たのだけど、通話料とメール代ウェブ代を足して534円だった。まあ僕はそういう人間ですよ。しかしこれで3491円も取られるのか。基本料金、恐るべし。

[ 外出 ] 東京理科大学野田キャンパスに行く

 部屋を出る。歩いて三河島、電車で柏、運河。ここまで来るとちょっとした田舎である。東京理科大学まで歩く。途中に川があって土手が実にきれいだった。散歩したくなるなあ。ATM でお金を引き出す。物理の友人に会う。一時半から六時頃まで、学会の発表を聞く。帰ることにする。生協でパンを買って食べる。歩いて運河、電車で柏、三河島。薬局とスーパーで買い物をしていく。見上げると丸い月が見える。

[ 研究 ] 日本物理学会第60回年次大会

 流体の発表を一通り聞いてきました。助手さん、ボス、先輩の発表を含む。どの研究もなかなか興味深いもので、初めての学会を楽しむことができました。質問のひとつもした方が良かったのかな。メンバーは常時40人程度。発表者は15人だったので、メンバーの三人に一人は発表者といったところでしょうか。
 さて、ある方が球殻中の熱対流における振動解への遷移について発表していたのですが、レイリー数がこの領域だと球面調和関数はこのようになる、などとひたすら淡々と説明してきて、結論のところになって

結論
「いろいろあった。」
(参考文献:清水義範「国語入試問題必勝法」)

とあったので、思わず笑ってしまいました。そう来るか、お姉さん。やられた。あの淡々とした口調もわざとだったのか。僕もいつか学会の発表でジョークを持ち出すことにしよう。そうしよう。

[ 花瓶 ] 080:花瓶に花を入れない

 その部屋は壁のいたるところに棚が取り付けられていた。窓と扉を除けば、四方に棚のない壁はなかった。そしてどの棚にも例外なく花瓶が所狭しと並べられ、どの花瓶にも沢山の賑やかな草花が活けられていた。彼女は花瓶のひとつを手に取ると、部屋の中央のテーブルに置いて花を抜き出した。それはもう枯れている花だった。どんな花もいつかは枯れる。そういうものだ。彼女は枯れた花を足元に置くと、新聞紙の包みから新鮮な花を取り出した。それを花瓶に入れて、丁寧に形を整えてからまた棚に戻す。彼女は途方もない数の花々の中で、その果てることのない作業を繰り返していた。花の部屋は、いつだって満開の花々で満たされていなければならない。彼女はそう信じ込んでいるのだろう。彼女は花を愛するひとだった。よく花の中で暮らしていたいと言っていた。ただそれだけのことだったのに。こうなってしまったのは、誰が悪いわけでもない。きっと仕方のないことなのだろう。私はこっそりと花瓶のひとつを手に取って、静かに服の内側に忍ばせた。大丈夫、彼女は花の交換に夢中で、私のことには気付いていない。それに、この夥しい数の花瓶のひとつがなくなったところで、彼女がそれに気付くはずもないだろう。私は部屋の外に出た。もう我慢ができなかった。私にだって怒るときくらいある。私は家の外に飛び出して、全力で裏山を駆け登った。花瓶から草花が零れ落ちた。息が上がり、腹が痛くなった。畜生、畜生。やっと頂上に辿り着いた。沢山の野花が咲いていた。遠くには海が見えた。風景は何も変わっていない。私は花瓶に残った花を取り出して、野花の群れの中に置いた。見上げた空はどこまでも遠かった。私は海に向かって力いっぱい花瓶を投げた。

2005/3/25 Fri

 喧嘩なんかしたくありませんよ

 悪い夢を見た。ある知人と僕が喧嘩をしている夢だった。嫌だなあ。きっと僕は気が立っているのだろう。
 起きたのは十二時頃。長いことぼーっとしている。どうにも動き出せない自分がいる。ダメだなあ自分。シャワーを浴びる。昨日と同じミソラーメンを作って食べる。具を炒めたフライパンにスープを注ぎ込むのが楽しくて仕方ない。ヨーグルトを食べる。長いことぼーっとしている。七時頃に部屋を出る。自転車で鶯谷。松屋で夕食を取る。電車で秋葉原、小岩。八時から十二時までピアノのお仕事。まあいつも通り、のんびり弾いていました。なんとなく昔の自作を弾いてみる。懐かしいなあ。休み時間には本を読む。中島らもの「今夜、すべてのバーで」を読み終えました。次は北村薫の「水に眠る」です。お仕事を終えて、電車で秋葉原、鶯谷。自転車で部屋に戻ります。途中、コンビニでお酒を買っていく。部屋ではひたすらぼーっとしている。お酒を飲む。
 寝たのは三時頃でした。ちょっと疲れているのかも知れません。何もしていないのにね。やれやれ。

[ 読書 ] 中島らも「今夜、すべてのバーで」講談社文庫

 これは面白い。傑作だと言われるのも納得してしまう。やはり中島らもは文章がうまいなあ。個性的でかつ的確な言い回しばかり。読みやすく、分かりやすく、表現力豊かで、引き込まれる。
 アル中患者の日々を巧みに描いた小説で、薄暗くて救いようのない話にもできそうなのに、安易にそうしないところが良い。どこか読んでいて楽しくなってくる。それでいて、アルコールとは何か、ドラッグとは何か、依存とは何か、そういった本質的な問題にまで深く立ち入っているのも実に見事。人物の描写もとても丁寧で説得力があり、きちんと生きた人間が動いているのが分かる。恐ろしい人間がいれば、落ちていく人間もいる。世の中には様々な人間がいるものである。
 この小説のベストキャラクターは、間違いなく赤河先生でしょう。憎らしくも頼もしい。身近にいたらちょっと嫌だけど、でも好きですよ、こういうひと。主人公と話し合う場面はどれも実に小気味よく面白い。特に印象的だったのは次の会話。

「飲む人間は、どっちかが欠けてるんですよ。自分か、自分が向かい合ってる世界か。そのどちらかか両方かに大きく欠落してるものがあるんだ。それを埋めるパテを選びまちがったのがアル中なんですよ」
「そんなものは甘ったれた寝言だ」
「甘ったれてるのはわかってるんですが、だからあまり人に言うことじゃないとも思いますが、事実にはちがいないんです」
「欠けてない人間がこの世のどこにいる」
「それはそうです」
「痛みや苦しみのない人間がいたら、ここへ連れてこい。脳を手術してやる」

 突き刺さるような痛さと、痛さから逃げ出す弱さと、弱さを乗り越える強さを、学び取ることができる一冊だと言えなくもないけど、敢えて言わない。何かが確実に間違っているので。
 とにかく、読んでいてお酒が飲みたくなる小説でした。巻末では中島らもと山田風太郎が対談。何故、山風。

今夜、すべてのバーで 今夜、すべてのバーで』 文庫
講談社(講談社文庫)
著者:中島 らも(著)
発売日:1994/03, 価格:\560, サイズ:15 x 11 cm

--内容(「BOOK」データベースより)--
薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような…。アルコールにとりつかれた男・小島容が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作。

[ 花瓶 ] 081:花瓶にちょうつがいを入れない

 沼田の趣味は何か特定の種類の物を集めることである。つまりはコレクションというわけなのだが、その方向性が少しばかり変わっている。切手や硬貨を集めるなら分かる。酒瓶や食器でもいいだろう。化石や絵画なども悪くなさそうだ。しかし沼田のコレクションはそんな生易しいものではない。たとえば、書類の正誤表。たとえば、注射器のピストン。たとえば、タイトルがぬで始まる書物。たとえば、使用済み藁人形。そういったものを集めているのである。新聞紙の題字を毎日切り取って集めていたことだってある。集めてどうするのかは知らない。きっと集めること自体が目的なのだろう。そんな沼田がまた新しいコレクションを集めたのだという。今度は服のタグでも集め出したのかと思いながら、私は沼田のもとを訪れた。沼田は相変わらず元気そうで、血色も良く、私の二十五倍くらい言葉を話した。今度沼田が集め出したのは、ちょうつがいだという。沼田にしては割と普通ではないかと私は思ったが、実物を目の当たりにして呆れてしまった。どのちょうつがいも一様に恐ろしく錆びれていたのである。十年や二十年ではこんな錆は付かないのではないだろうか。何でも古い建築物が取り壊されたり建て直されたりするときに、作業をする業者に頼んで手に入れてもらうのだという。相変わらず変わったものばかり集めている。それにしても量が半端ではなかった。沼田は何故かちょうつがいを大きめの花瓶に入れていたのだが、それらは花瓶の口から今にも零れ落ちそうになっていた。ちょっと持ってもいいかい、と聞いてみた。いや、と沼田は言う。これは命の次に大切なものだから。沼田には命の次に大切なものが二十八種類くらいあるに違いない。仕方ないな、と私は引き下がった。沼田は明らかに安堵した顔を見せた。そして花瓶を戻しに保管庫に向かった。私は蛇の縫いぐるみのコレクションを眺めていた。何かが割れる音と沼田の叫び声が聞こえた。やっぱり重かったんだろうなあ、と私は思った。

2005/3/26 Sat

 リセットは割と好きな単語です

 お昼の十二時頃に起きて、ひたすらぼーっとしている。あまり気分は良くない。まあ生きていれば誰だって色々なことがありますよ。気にしていたって仕方ない。シャワーを浴びる。またしばらくぼーっとしている。やっと部屋を出たのは五時頃。近所に買い物に出掛ける。自転車に乗っていると気分は良くなってくる。気分転換は良いものです。部屋に戻ってパンを食べる。またしばらくぼーっとしている。夜になって夕食を作る。ヤキソバ。具は、挽肉、モヤシ、ニンジン。ちょっと量が多くて苦しくなってしまった。お茶を飲んでのんびりしている。怠惰だ。夜中になってから今夜は満月であることに気付き、外に出てみるものの生憎の曇りである。朧月夜であった。またしばらくぼーっとしている。お酒を飲んで、パンを食べる。不健康だ。
 寝たのは五時頃でした。どこか遠くに行って住むことができたら、と思うときがある。長崎でも北海道でもイギリスでもアメリカでもいい。とにかく自分の生活をリセットしてしまいたくなるときがある。もちろんそれは結局のところ甘えでしかなくて、本当に新しい大地は自分の内側にあるものなのだろうけれど。ただ、見知らぬどこかへの漠然とした憧れは確実にありますね、はい。自分は地元でも東京でも死なない気がしますよ。

[ 花瓶 ] 082:花瓶に妖精を入れない

 妖精を捕まえた。なんとなく屋根に上って昼寝をしていたら、遠くから妖精が飛んできたのである。緑の服に赤い靴で、小さな羽を小刻みに動かしていた。手のひらくらいの大きさしかなかった。妖精は僕に近付くとにっこりと微笑み掛けてきた。僕も微笑みを返した。そして素早く平手で妖精を屋根に叩き付けた。うるさい、と下から怒鳴り声がした。構うものか。意識を失った妖精を握り締めると、僕は部屋に戻って花瓶の中に閉じ込めた。花瓶の口にはハンカチとロープとガムテープで厳重に封をした。妖精にどれだけ力があるのかは知らないが、これを外して逃げるのは容易ではないだろう。僕は花瓶を持って表に出た。いい気分だった。世界一の大金持ちがどれだけの財産を投げ打ったとしても手に入らないものを僕は持っていた。今や僕は世界の中心だ。胸を張って堂々と街を歩いた。目に映るすべての人間がつまらなく見えた。誰もが似たような顔をしていて、区別することができなかった。僕だけは違う。誰も妖精を持っていない。僕は妖精を持っている。僕だけは区別することができる。僕だけは違う。笑い出したくなった。誰も何も気付いちゃいない。馬鹿なんだなあ。僕が屋根の上から下に移動する間に、世界がこんなにも変わってしまったというのに。僕以外のすべての人間は存在の危機に立たされているというのに。死ぬまで分からないんだろうね、と僕は呟いた。あら、よく分かってるじゃない。声が聞こえた。僕は周囲を見渡した。灰色の人々が歩いているだけだ。暖かい日差しの中で寒気がした。僕は足を動かそうとして、足が動かないことに気付き、正面からコンクリートに倒れ込んだ。聞いたことのない音がした。花瓶は割れて、何もない空洞が白昼の明るみに躍り出た。

2005/3/27 Sun

 なんとなく「熾火」を弾き返しています

 午後の一時頃に起きる。全く、腹が立つくらいにいい天気である。しばらくぼーっとしている。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。なかなか思うようには弾けないもので。やがてシャワーを浴びて、毛布を干して、部屋の掃除をする。いつも通りにのんびりしています。どんどん時間が無駄に流れていく。夜になってお腹が空いたのでヤキソバを食べる。具は昨日と同じ。またぼーっとしている。テレビに向かって「ガキ」を見る。気分はあまり良くない。長いことぼーっとしている。逃避だ。
 寝たのは朝の六時過ぎでした。行き止まりに出口はないんだよ、と僕の中の誰かが言っている。じゃあどうすればいいんだよ、と僕の中の誰かが答えている。スタート地点に戻ってやり直せって言うのか。やれやれ。自分は他人の始まりですね。

[ ガキ ] 人気爆発!! ダイナマイト四国の素顔に迫る!!

 いや、もうどうでもいいよ。がんばれ、鳴門川先生。がんばれ、ミサワさん。がんばれ、ダイナマイトいばらき。まだまだダイナマイト四国ネタは続きますね。年末まで続くかも知れない。しかし今となってはあの遠藤の七変化が懐かしい限りです。すべてはそこから始まった。
 トークは気候について。怒り過ぎだよ、松本さん。三月は寒いから。名言だ。喉元過ぎれば寒さを忘れるってかあ、ねえ。十月から五月までって、また長い冬なんですね。

[ 花瓶 ] 083:花瓶に水銀を入れない

 佐川はいつも大事そうに花瓶を抱えている。電車の中でも買い物中でも決して手放すことはない。風呂場やトイレに入るときでさえ、花瓶は必ず目の届く位置にある。花瓶の中には水銀が入っていて、決して軽いものではないのだが、佐川にはそれを持つのが苦ではないらしい。佐川は水銀を自分の心だと信じている。ある日急に心が抜け落ちてしまい、どんな簡単なこともできなくなって、生きることも死ぬことも満足にできず、それでも心が逃げ隠れた先を必死になって探して、やっと見付け出したのだと信じ込んでいる。どうして佐川がそんなことを思い込むようになったのか、俺にはよく分からないし、正直なところあまり興味もない。誰だって自分の心だと信じ込んでいるものくらいあるだろう。そういうことだ。もちろん、常に花瓶と一緒にいないと生きられない女に、まともな人生を歩めるはずはない。佐川はまともじゃなく生きて、まともじゃなく死んでいくのだろう。できるだけ外には出ないようにしているし、出るときは必ず花瓶の口に厳重に蓋をする。息苦しいだろうけど、がんばるんだよ、私もがんばるから。花瓶に向かってそんなことをぶつぶつ言い続けている。俺にはよく分からない世界が見えているのだろう。俺は別に佐川を理解したいとは考えていない。水銀が俺の心じゃないことくらい、よく分かっているつもりだ。ただ俺は、時々佐川が寝ている隙を狙って、花瓶にこっそり水銀を足しておく。佐川は水銀が蒸発することも知らないのだろう。心が蒸発するわけがないと信じ込んでいるのだろう。でも心だって蒸発してしまうものだし、何かを混ぜ続けないと消えてしまうものだ。もしも俺が衝動的にこの花瓶を割ったら、佐川は両手両足を使って水銀を掻き集め、毒物だと知っていても口に含んでしまうことだろう。俺は首を振った。花瓶を窓から放り投げてしまいたくなるときがたまにある。そして、自分がそれをやりかねない人間であることも、俺はよく理解している。

2005/3/28 Mon

 先輩の送別会がありまして

 お昼の一時頃に起きる。あまり気分は良くない。しばらくぼーっとしている。パソコンに向かったり電子ピアノに向かったり。シャワーを浴びて、洗濯をする。ヤキソバを作って食べる。具は昨日一昨日と同じ。三日間同じものを食べ続けても特に苦ではない自分がいる。三時半頃に部屋を出る。雨の中を歩いて町屋、電車で代々木上原、歩いて研究所。しばらくぼーっとしている。六時頃には皆さんと研究室を出て、歩いて駒場、電車で渋谷。居酒屋で研究室飲み。とても楽しく飲ませて頂きました。ありがたい限り。お酒が好きです。九時頃にはお開き。歩いて研究所に戻ります。道を間違えてしまった。やれやれ。色々と考え事をする。駒場のコンビニでヨーグルトを買っていく。研究室ではコーヒーを飲んで、パンを食べる。ちょっとぼーっとしている。
 徹夜で TeX の入力をすることにする。もし今いるところが行き止まりで、行き止まりに出口はないのなら、行き止まりを破壊して先に進めばいいだけのことじゃないか。とても簡単なことだ。悩むな、迷うな。呼吸を止めて、歯を食いしばれ。ツルハシを振り上げて、コンクリートを叩き壊せ。

[ 花瓶 ] 084:花瓶に塩辛を入れない

 妻は機嫌を損ねると意地の悪い真似をする。リビングの椅子にずらりと化粧品を並べたり、バスタブに蛍光ペンと消しゴムを浮かべたりする。クローゼットにある服がすべて裏返しになっていたことだってある。私はそういった妻の奇行を、特に許容するわけでも拒絶するわけでもなく、何も言わずに受け流すことにしている。妻の機嫌はすぐに変わる。私がむやみやたらと気にして、どうにかするようなことではないのだ。今日も会社から家に帰ると、明らかに妻は機嫌を損ねていた。服のボタンが半分以上取れていたのですぐに分かった。私達は夕食を取ることにした。ご飯が出され、お味噌汁が出され、鯖の塩焼きが出され、おからの煮物が出され、ほうれん草のおひたしが出され、花瓶が出された。私は妻を見た。妻はつまらなそうに言った。烏賊の塩辛が入っています。花瓶の中を覗き込むと、確かに淡い赤茶色のものが見えた。箸を伸ばすものの、花瓶の底には届かない。仕方なく私は花瓶を持ち上げて、ご飯を上で逆さまにした。妻はつまらなそうに私のことを眺めていた。少しずつ塩辛が落ちてくる。私は花瓶を戻す。ご飯を食べて、塩辛を食べて、お味噌汁を飲む。おかずを食べて、また花瓶を逆さまにする。また少しずつ塩辛が落ちてくる。少しずつ。妻の箸は食卓の上に置かれたままだった。また私が花瓶に手を伸ばしたとき、妻は急に花瓶を取り上げて、床に向けて叩き付け、そして食卓に顔を伏せて泣き出した。私は箸を置いて、妻の頭を撫でた。床には花瓶の破片と烏賊の塩辛が飛び散っていた。

2005/3/29 Tue

 肋骨の内側が痛くなるんですよ

 徹夜で作業をしている。パンを食べてコーヒーを飲んでクラッカーを食べる。内臓が痛くなって弱る。嫌だなあ。昼前に TeX のトラブルが起きて混乱する。再インストールしたらなんとかなった。まあバージョンアップができたので良かったのだろう。しばらくぼーっとして、ヨーグルトを食べる。六時半頃に研究室を出る。二十時間くらい研究室にいたことになるのか。歩いて代々木上原、電車で町屋、歩いて部屋。ちょっとぼーっとしている。疲れました。夕食にカレーを作って食べる。お風呂に入る。また長いことぼーっとしている。
 寝たのは五時頃でした。夜通しで作業をしていたら流石に臀部が痛くなった。クッションが欲しいなあ。

[ 研究 ] TeXの入力をする

 基礎方程式、アンサンブル平均、平均場と擾乱場、TSの導入、フーリエ変換、スケールパラメータ展開、零次の方程式まで入力。結構慣れてきましたね。align は便利だなあ。もう eqnarray は使わないことだろう。

[ 食事 ] 部屋でカレーを作る

 なんとなくマーガリンで、豚肉、ニンジン、タマネギ、ジャガイモを炒める。水を加えてから色々とスパイスを入れてルーで仕上げる。茹でたパスタにかけて食べる。なかなか美味しかった。マーガリンの匂いがいいですね。

[ 花瓶 ] 085:花瓶に石鹸を入れない

 森尾さんの部屋からはいつも石鹸の匂いがする。なんでも花瓶の中に石鹸を入れているのだという。どうしてそんなことをするのか僕にはよく分からないけれど、まあひとにはひとの事情というものがあるのだろう。森尾さんが花瓶に石鹸を入れるところを僕は一度だけ見たことがある。朝の九時頃だった。森尾さんは玄関の靴箱の中から石鹸を取り出すと、乾いたまな板の上に置いて包丁で切り始めた。縦に六回、横にも六回。きれいに切れるものだと僕は感心していた。森尾さんは部屋から花瓶を持ってくると、中に入っていた石鹸を生ゴミ入れに捨てて、切り分けたばかりの石鹸を入れていった。ひとつひとつ、四十九回。それが済むと油性ペンを取り出して、花瓶に小さく何かを書き込んだ。よく見てみたら花瓶には沢山の短い縦棒が並んでいた。縦棒は横方向に整った列を作り、どれもが全く同じ長さをしていた。縦棒の行進は花瓶を半周しようとしているところだった。何を見ているの。森尾さんは僕を睨み付けていた。ごめん、と僕は下を向いて謝った。とにかく、森尾さんの部屋からはいつも石鹸の匂いがする。これまでもそうだったし、これからもそうなのだろう。ある日、久し振りに僕が森尾さんの部屋に行くと、そこからは相変わらず石鹸の匂いがしたけれど、花瓶が前とは違う花瓶になっていたのに気が付いた。どうしたのかと聞くと、あれは割ったのだという。あの花瓶はもう終わったからね。新しい花瓶をよく見ると、やはりそこには、油性ペンで書かれた縦棒が並んでいた。

2005/3/30 Wed

 美味しいですね、シャンディーガフ

 起きたのは午後の二時半前。またのんびりしたものである。流石にちょっとだるい。胃の調子が良くないような気がする。空を見ると今日もまたいい天気である。しばらくぼーっとして、シャワーを浴びて洗濯をする。パスタを茹でてカレーをかけて食べる。パソコンに TeX をインストールする。これで部屋でも作業ができるようになった。
 五時頃に部屋を出る。自転車で本郷へ。大学でキシピ氏と待ち合わせ。秋葉原へ。輸入食品のお店に行く。僕は何も買わず。キシピ氏はスナイダーズを買っていた。石丸電気の修理受付センターに行き、イヤホンの修理をお願いする。保証期間中で良かった。デニーズで夕食を取る。ラザニアとカンパーニュとパフェのセット。なかなか美味しかったですね。東京まで歩く。丸ビルの三十六階に行って景色を眺め、地下で京番茶とビールとジンジャーエールとチューハイを買う。キシピ氏と一旦別れて、自転車で門前仲町。随分と迷ってしまった。キシピ氏の部屋へ。パソコンに向かったりテレビに向かったり。お茶やお酒を飲んで、お菓子を食べる。妹さんが買ってきてくれたカステラや蒸しパンを頂く。
 寝たのは三時半頃でした。キシピ氏はジュースをお酒だと思い込んで飲んでいた。きっと酔っていたのだろう。

[ 食事 ] シャンディーガフを飲む

 ビールとジンジャーエールを同量ずつ混ぜる。以上。これがとても美味しくてびっくりしてしまった。キシピ氏と妹さんにも好評であった。これはいいなあ。安くて美味しい。また作って飲むことにしよう。因みに使ったビールはバドワイザーでした。

[ 花瓶 ] 086:花瓶に蜥蜴を入れない

 寝室から下りて居間に入ると、仕舞い忘れていた炬燵の上に、地味な色をした小さな蜥蜴がいた。私はよく掃き出し窓を開けたままにしておくので、虫の類が入り込んでくることは珍しいことではない。ここはもう山の中といってもいいくらいの片田舎なので、野生の生き物達としても人家が珍しく興味深いのだろう。私は蜥蜴を指先でひょいとつまみ上げた。蜥蜴は暴れるものの、逃げ出すことはできない。そのまま窓の向こうに放り投げても良かったのだが、私はなんとなく戸棚の上にあった花瓶の中に蜥蜴を入れた。蜥蜴は這い上がろうとしてきたので、上に漢和辞典と夏蜜柑を置いて蓋をした。どうしてそんなことをしたのかは自分でもよく分からない。醤油が切れ掛かっていたためかも知れないし、読書の調子が悪かったからかも知れない。あるいは今朝の夢に死んだ弟が出てきたのが良くなかったのかも知れない。まあしかしどんな理由でも大差はないのだろう。私は朝食を取ってから畑仕事に出掛け、日が暮れてから家に戻った。相変わらず花瓶は居間の戸棚の上にあって、漢和辞典にも夏蜜柑にも変化は見当たらず、まるでこの家が出来たときから花瓶がそこにあったかのようであった。また朝が来て、夜が来る。私は意図的に蜥蜴のことを考えないように努めることにした。今更蜥蜴を解放する気にはなれなかった。もし蜥蜴が何らかの理由によって解放されるとしたら、それは私の意図を飛び越えた理由によるべきだと考えた。やがて収穫の季節が訪れ、私も忙しくなり、そしてまた忙しくなくなった。そしてその頃から、私はわざと戸棚の前で注意力を落とすようになった。ついうっかりして花瓶を割ってしまいたかった。自分の思惑や責任と関係しないところで、あの小さな蜥蜴を解放してやりたかった。夏蜜柑はもうすっかり萎んでいた。とうとうある日私は観念して、戸棚を引っ繰り返すことにした。隣人との囲碁に連日負け続けたために、堪忍袋の緒が切れて戸棚を引っ繰り返したら、上にあった花瓶が割れてしまった。そういうことだ。私は力いっぱい戸棚を引っ張った。重い戸棚の端が浮かんだ。夏蜜柑が転んだ。漢和辞典はあらゆる漢語を知悉したような顔をして、真面目そうに私のことを眺めていた。

2005/3/31 Thu

 ダーツが下手だなあ自分

 十二時半頃に起きて、しばらくぼーっとしている。お茶を飲む。のんびりしています。二時頃に部屋を出る。どうもお邪魔しました。門前仲町から自転車で上野公園。ピアノの会の花見に顔を出してきました。といっても桜はまだあまり花を咲かせていなかったのだけど。夕方までぼーっとして、二次会ではダーツをする。後輩とゲームセンターに行ってドラムマニアをプレイする。九時頃にはお開き。自転車で帰ります。途中、ラーメン屋でチャーハンを食べて、スーパーでパンを買っていく。部屋ではしばらくぼーっとして、お風呂に入る。また長いことぼーっとしている。パンを食べる。
 寝たのは四時過ぎでした。しかし明日から後輩も社会人になってしまうのですね。ううむ。僕はいつまで学生であり続けるのだろう。早く自分を養えるようになりたいものです。

[ 花瓶 ] 087:花瓶に心を入れない

 花瓶に心を封じ込めてしまった日から、彼女は人間として生きることを止めてしまった。指を折って数を数えることも、二本の足で立って歩くことも、意識せずに息を吸い込んで吐き出すことも、自分が誰であるかについて考えることも、もう彼女にはできなくなってしまった。燃え盛るような夏のことだった。彼女は一日中ベッドの上に横になり、何の模様もない天井や壁を眺め、恐ろしく長い時間をかけて最小限の食事をした。食事の内容を認識することも、右手でスプーンを握ることも、食事に向かって手を伸ばすことも、スプーンを口に入れることも、咀嚼することも嚥下することも、決して容易なことではなくなっていた。それでも彼女は確実に自分の仕事を片付けていった。長距離走の選手が果てしない距離を走り続けるように、彼女は途方もない粥を食べて絶望的なスープを飲んだ。そして朝食が終わった頃にはもう昼食の支度が始まっていた。そんな日々の繰り返しだった。医者はいつも首を振って気休め程度の薬を置いていった。見舞い客は枕元にあるタオルに向かって慰めの言葉を投げ掛けた。どうして彼女は花瓶に心を入れてしまったのか、皆はよくそんなことについて話し合った。誰かは言った、臆病者には臆病者なりの自殺の方法があるんだよ。誰かは言った、恋人の命と天秤にかけて美しい決断をしたんだよ。誰かは言った、死神が人間を殺すには大鎌を振るう必要はない、その姿を見せるだけですべての人間は意のままに操られてしまうのだ。誰にも本当のことは分からなかった。そして誰にもどこに花瓶が隠されてしまったのか分からなかった。彼女は一日に一文字ずつ字を書き、花瓶に心を封じ込めたことを皆に知らせたのだった。どこに花瓶があるのかと尋ねても、彼女は何も答えようとしなかった。花瓶の居場所を知っているのか知らないのか、その様子から判断することはできなかった。花瓶には膨大な額の懸賞金が掛けられ、誰もが血眼になって花瓶の行方を探したが、彼女の心を見付け出したものはいなかった。冬が来たら何もかもが終わってしまうことは分かっていた。それでも海に入ろうとする者は日に日に少なくなり、夜は少しずつ闇の色合いを濃く深くしていった。そんなある日、寝ている彼女の元に窓から何かが忍び込んできた。シャボン玉だった。シャボン玉は彼女の傍をふらふらさまよっていた。すぐに割れることは分かり切っていた。しかし彼女は全身全霊の力を込めて、左腕をシャボン玉に向けて伸ばした。彼女はシャボン玉を手に取った。そしてゆっくりと胸に抱いた。シャボン玉は彼女に吸い込まれていった。世界のどこかで花瓶が割れた。彼女は起き上がり、大きく伸びをして、ベッドから床に下り、仁王立ちして笑い出した。その日から秋が始まった。

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