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- 11/04/30 -

 c の前は cis だったのか dis だったのか

「息子よ、今日はお前に教えなければならないことがある」
「え?」
「ドビュッシーの『喜びの島』は cis と dis のトリルから始まるな?」
「はあ」
「トリルの後には c と h が続く。ところで、あの曲では、最後にも最初と同じ cis と dis トリルが出てくるのだが、 春秋社の『ドビュッシー集 2 』を見ると、最後のトリルではその終わり方が明示されている。cis - dis - cis - c - h だ。ここで大事なのは c の前が cis だという点だ。じゃあ、明示されていないものの、最初のトリルでも同じようにトリルが終わるべきだ、そう思うだろう?」
「まあ」
「しかし、最初のトリルと最後のトリルとでは、決定的な違いがある。そう、運指だ。春秋社の楽譜を見ると、最初では 2 - 4 だったのに、最後では 1 - 3 と書いてある。同じ音形のはずなのに、わざわざ運指が変更されているんだ。もちろん、実際には、最後のトリルでは 1 - 3 - 1 - 3 と来て、1 - 4 - 3 - 2 - 1 とトリルが終わる。では、最初のトリルではどうだろう。 2 - 4 - 2 - 4 、これはいい。ここまでは、いいんだ。しかし、なければならないはずの 2 - 4 - 3 - 2 - 1 の運指が書かれていない。これはどのように解するべきか。そう、実は、最初のトリルの終わりは cis - dis - cis - c - h ではなく、cis - dis - c - h なのではないか? だからこそ、意図的に運指が変更されているのではないか?」
「父さん、何が言いたいの?」
「息子よ、私がお前に教えたいのはこれだけだ。c の前は cis だったのか dis だったのか。私には、この謎を解くことが、できなかった……」
「父さん……?」
「ああ、息子よ、謎を……、謎を解き明かしてくれ……。どうか、世界を、救って……」
「父さん!?」
「………………」
「父さ――――――ん!」

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