「ボス、どうか、どうか許して下さい」
「なあお前、よく聞け。俺はな、靴を脱いでから自殺する奴が嫌いなんだ」
「は？」
「あいつらは一体何なんだ？　死んじまったら靴なんか要らないとでも思ってんのか？　天使さまが白馬でお迎えに来てくれるのか？　そんな甘えた心構えで本当に天国に行けるとでも思ってんのか？　世の中ナメてねえか？　そんな奴は地獄に落ちて、ゴツゴツした岩場を歩かされて、灼熱の溶岩を歩かされて、針の山を歩かされるのがオチだと思わねえか？」
「あ、はい」
「よし。分かったらお前は靴を脱ぐんじゃねえぞ。便所はあっちで、屋上はそっちだ」

「ホームズ！　被害者を殺したのは、一体この中の誰なんだ！」

「……お集まりの皆さん。ワトソン君はこのように、どなたがマクルアーさんを殺害したのか、知りたいそうです。では今から、じっくりとご説明いたしましょう。
　ところで皆さんは、足の表について、考えたことはありますか？
　手はいいんです。手は問題じゃありません。手の表は、手のひらで、手の裏は、手の甲です。分かり切った話をして申し訳ない。そんなこと、幼稚園児だって知っている。
　足の裏はどうでしょう。これも問題ではありません。そう、足が床に接触する部分ですね。では、足の表は、その裏側ですか？」

「ホームズ、君は何が言いたいんだ……？」

「悪いけど質問は後回しにしてくれないか、ワトソン君。
　そこのあなた、ご自身の足を見てください。あなたは足の甲を見て、果たしてそれが、足の表であると認識できますか？　それはむしろ、自然な手のアナロジーからすれば、足の裏ではありませんか？
　私が言いたいのは、こういうことです。

　──足には裏しかない！」

「畜生！　バレたか！」

「思ったことは、はっきり素直に言えばいいよ。
　『死ね！』って思ったときは、『死ね！』って言えばいいし、
　『別にどうでもいいし』って思ったときは、『死ね！』って言えばいいし、
　『大好き…』って思ったときは、『死ね！』って言えばいいんだよ」
「それはもうツンデレとかヤンデレとかツンヤンとかじゃなくて、明らかに言語障害ですよね」