counter
-7MainanaDiaryVaseAboutMailAntenna

<< Prev | Main | Next >>

- 06/04/25 -

[ GreenEyedCats ] Dialogue Part I a

「えっと、どこまで話したんだっけ?」
「雪が降ったところまでだね」
「ああ、そうか。そう、冬の終わり頃には、クマを病院まで連れていったんだ。洗濯ネットと旅行鞄に詰め込んでね」
「病院…? あ、もしかして」
「うん、そういうこと」
「そっか。まあ仕方ないよね」
「申し訳ないとは思うけどね。クマは大人しかったよ。病院に行くまでの間は時々鳴いてたけど、着いたらもう暴れずにじっとしてた。脈拍を測るときに看護婦さんが『随分ドキドキしてますね』って言ってたよ。やっぱり怖かったんだろうね。手術が終わった後は『とても大人しい子でした』ってお医者さんから褒められたんだ」
「そっか。…ダメだ、あんまり考えるもんじゃないね」
「…そうそう、帰るときに病院のひとがカラーをくれるのを忘れていてね」
「カラーって?」
「手術の傷口を舐めないように、頭の回りをプラスチックの器具で覆うんだよ」
「ああ、化膿しないように」
「そう。クマの奴、部屋の前まで戻ったら麻酔が切れたのか、急に暴れ出してね。傷口を舐め出して大変だったよ。慌てて病院のひとに電話して来てもらったんだ」
「そりゃあ大変だったね」
「まあなんとか術後の経過も異常なし。相変わらずクマは元気だよ。なべて世はこともなし」
「…ふむ」
「実はこの話にはオチがあってね。病院で作ってもらった書類の写しを見たら、クマの種類のところに思いっきり『犬』って書いてあったんだ」
「ほんと?」
「ほんと」

<< Prev | Main | Next >>

MainanaDiaryVaseAboutMailAntenna-7