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- 06/04/24 -
■ トイレの赤ん坊
理学部一号館のトイレに入って、便器に向かっていたら、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
後ろを振り向いたら、トイレの個室の中で、赤ん坊がふわふわと浮いていた。明らかに生きている赤ん坊の顔ではなかった。
俺はそれを見て、溜息を吐いた。
「分かった、分かったよ。お前は死んだ。そんな小さい身体で死んでしまったんだ。悔いも恨みもあるだろう。だけど、だからって、俺にどうしろって言うんだ?」
赤ん坊は泣くのを止めて、少しだけ考える素振りを見せてから、天国に行った。俺は手を洗ってトイレを出た。