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- 05/12/26 -

[ ShortEssay ] 歯ブラシさんの日常

 洗顔フォームを歯磨き粉と間違えるという状況は、新井理恵を持ち出すまでもなく随所で見かける有名なネタであり、かく言う僕も間違えたことがある。キャップを外すところで気が付いたから助かったものの、もしも歯ブラシに洗顔フォームをつけていたら、間違いなく撲殺されていたことであろう。いや、これは冗談ではない。歯ブラシは恐ろしい。歯ブラシは毎日毎日、来る日も来る日も赤の他人の小汚い口の中を洗浄しなければならないのだ。焼肉を食べた日があれば、二日酔いの日だってあることだろう。それでストレスの溜まらない方がどうかしている。そんな、今にもぶちきれる寸前の歯ブラシに、洗顔フォームでもつけてみなさい。確実に撲殺される。間違いない。でもそんな話はどうでもいい。僕には疑問がある。何故、間違えるのは必ず「歯磨きをしようとして洗顔フォームを手に取ってしまう」であって「顔を洗おうとして歯磨き粉を手に取ってしまう」ではないのだろうか。こう考えてみると、途端にさっきまでの推測が疑わしくなってくる。実は、歯ブラシさんは洗顔フォームを歓迎しているのかも知れない。あれだ、「いっつもいっつも歯磨き粉でつまんねえなー、たまに刺激も欲しいよなー。たとえばさー、そこの、洗顔フォームなんてのも来ないかねー。なんてったって、洗顔フォームは、そう、泡立つからね」みたいなことを考えているのだ。洗顔フォームが来れば泡立つ上に、持ち主に一矢報いることもできて、一石二鳥ではないか。そう、我々は知らず知らずのうちに、歯ブラシさんの思念波を受信していたのである。洗面所。そこでは毎日毎日、来る日も来る日も我々と歯ブラシさんとの見えざる死闘が繰り広げられている。

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