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- 05/12/22 -

[ GreenEyedCats ] 猫の寿命とそのあと

 ふと、猫は何年くらい生きられるのだろう、と思った。
 僕の知っている猫で十九年も生きていてまだ元気な奴がいる。また、知り合いのおばさんが飼っていた猫は二十一年も生きたそうだ。ギネスブックに載っている猫の長寿記録は三十四年二ヶ月四時間だという。
 でもそれらは特殊な例だろう。普通の猫は十年くらいで死んでしまうはずだ。いつか冷たくなって、土に埋められる。そして違う存在となる。犬になるかも知れないし、蜂になるかも知れないし、雲になるかも知れない。運が良ければ草原の大きなポプラの木になって、ひなたぼっこをしている猫達を見下ろせるかも知れない。夜になったら渡り鳥が枝にとまって、遠い遠い世界の話をしてくれることだろう。往々にしてそういう話の九割は誇張なのだけど、まあ誇張は誇張で悪くないものだ。たとえ作り話だとしても、南の島で白いイルカと殴り合ったときの話なら、下手な漫談より面白いに違いない。
 とにかく、猫はいつか死ぬ。それも、大抵の場合は、人間よりも先に死ぬ。

 いつか年寄りになって、日の当たる縁側でお茶を飲みながら、座布団で寝ている猫の背中を撫でたい、といった分かりやすい夢がある。いつからかその夢に出てくる猫は、クマかヴァイスのどちらかになっていた。考えてみればもう二ヶ月も一緒の部屋で暮らしているのだ。自然と思い浮かばない方がどうかしている。
 しかしそれは決して叶わぬ夢だ。二十年経っても僕はまだ中年で、年寄りとは言いがたい。僕が年寄りになった頃には、猫達はもう猫達ではないだろう。多分、もう若木を通り越して、立派な木になっている頃だと思う。真っ黒な二本の木が隣り合って立っていたら、それだ。一本は幹がやや太く、もう一本に白い部分があったら、もう間違いない。その近くには雉色の木も見付かるはずだ。
 僕も年を取って、いつか死ぬ。ただその前に、そういうポプラの木を眺めることができたら、それはとてもいいものだろう。なに、探し出すのはそんなに難しいことじゃない。なんてったって、真っ黒なポプラの木だ。そうそうあるもんじゃない。きっとすぐに見付かる。僕も渡り鳥が皇帝ペンギンと格闘したときの話を聞かせてもらうことにしよう。

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