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- 06/02/05 -

[ GreenEyedCats ] 初の雪

 五年振りの大雪だそうだ。

 先月のことである。お昼頃に起きて、カーテンを開けた僕は驚いた。窓の向こうが真っ白になっていたからだ。僕は横で寝ていた猫達を叩き起こした。雪だよ、雪。窓を開けると大粒の雪がひらひらと降っていて、向かいの塀には五センチほどの雪が積もっていた。田舎ならこれくらいの積雪は珍しいものではないけれど、ここは東京都の荒川区である。こんな光景は滅多に見られない。クマは窓のところに立ち止まって、興味深そうに外の様子を眺めていたけれど、やがてベッドに引き返して丸くなってしまった。きっと寒かったのだろう。
 しかしヴァイスは違った。ベランダに出て逡巡し、手すりの上で逡巡し、エアコンの室外機の上で逡巡しながらも、結局は雪の積もる地面に降り立っていった。ゆっくりと部屋の前を歩き、ゴミ置き場の向こうにまで行ってしまった。雪の上に残った小さな足跡を、音もなく降る雪が消していった。少しばかり心配になったけど、あまり気にしないことに決めた。
 この雪は、猫達にとって、生まれて初めての雪だ。僕は生まれて初めての雪なんか覚えていない。覚えているはずもない。僕は冬に生まれた。僕は生まれてすぐに雪を見たはずだ。覚えているはずがないじゃないか。そのときの僕は僕じゃなかった。人間だったかどうかさえ疑わしいくらいだ。
 もう猫達は子供じゃない。すっかり大きく育ってしまった。体格だけなら立派な猫だ。それでもこの冬は猫達にとって初めての冬で、この雪は猫達にとって初めての雪だ。クマはいつものようにベッドの上で寝ている。猫ともあろうものが、たかが雪くらいで、影響を受けるわけにはいかないのだ。

 結局、小一時間ほどして、ヴァイスは部屋に戻ってきた。そのとき僕は台所でチャーハンを作っていた。抱き上げたヴァイスは冷たく濡れていたけれど、特に別状はなさそうだった。ヴァイスはベッドの上に登り、クマと一緒に丸くなった。二匹の猫達は雪のない部屋にいた。
 それから更に一時間後、僕はヴァイスのお尻から何か生物のようなものが出てきたのを見付けて驚くのだけど、それはまた別の物語である。

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