あのね、年賀状が来たんだよ、高校の友達から。そこにさ、まあ、雪だるまと犬のイラストがあって、雪だるまの口にはニンジンがささってて、犬は赤いセーターを着てたんだけど、それは別に関係なくて、こんな言葉が印刷されてたわけ。

I wish this year will be the happiest and best for you.

　いや、別に悪い文じゃないんだけど、なんかこう、妙に引っ掛かったんだよ。
　まあ友達も別にさ、わざわざこんな一文を考えたわけじゃなくて、もしそうだったら怖いけど、とにかくこれは、どっかにあった既成のイラストと文だと思うんだ。もしそうじゃなかったら怖いけど。そうじゃなかったら怖いけど。あとこれは本題とはあんまり関係ないんだけど、友達の年賀状に「ネコにトムとジェリーってつけろ」って書いてあってかなり笑った。どっちもネコだっての。
　それはいいんだ。さっきの英文だけど、日本語にしたら、まあ、こんな感じになるよね。

今年があなたにとって最も幸せで最も良い一年となりますように。

　どこがおかしいんだって？　いやさ、こう思ったんだよ。もしもこの年賀状の言う通りだとすれば、僕の人生は今年がピークなんだなあって。
　いや、まあ、今年いいことがあったとするじゃん。幸せなことがあったとするじゃん。でも、それって、まあ、とんでもなくいいこととか、とんでもなく幸せなことではない気がするんだよ。なんとなく。そりゃあ人並みに欲しいものくらいあるけど、TX90S とか CLP-F01 とかが手に入ったくらいで、人生が変わるわけじゃないだろうし。そんなもんだよ。僕は宝くじも買わないしギャンブルもやらないし、多分そもそも射幸心がそんなに強くないから、ほら、急にいいことが起こるなんて考えられないんだと思う。だから多分、ほどほどいいこと、ほどほど幸せなことがあるんだよ、今年は。まあ、これまでの二十三年間よりは、もうちょっと良くて、もうちょっと幸せなことがね。電車で女のひとを酔っ払いから助けたら部屋にカップが届いたとか、それくらいのいいことがあるんだと思う。
　そして、来年も多分、ほどほどいいこと、ほどほど幸せなことがあるよね、きっと。でもそれは、絶対に、今年を上回るものではないんだよ。来年、再来年も、その次の年も。死ぬまで。死ぬまで今年以上にいいことなんて何もないの。これからの何十年もの間、僕は、ああ、自分の人生は二十四のときがピークだったんだなあって思い続けるわけ。まあ、死にたくなるよね、そんなことを悟ったら。飲み会がある度に部下や後輩に向かって、二十四のときがピークだったんだ、二十四のときがピークだったんだって、いつもいつもその話ばっかりして、なんか自覚はないんだけど嫌われてるわけ。最後には飲み会にも誘われなくなる。一人で飲み屋に入ったらそこに連中がいて自分の悪口で盛り上がってる。はは、最低の発想だね。そりゃエルメスにも逃げられるわ。
　分かったよ。ビタミン剤とカブトムシでも食ってればいいんだろ。