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- 06/05/09 -

 エヌ氏がくまのプーさんを嫌う 200 の理由

 これまでのあらすじ。
 エヌ氏はくまのプーさんを蛇蝎の如く忌み嫌っていた。いや、その表現は適切ではない。エヌ氏がくまのプーさんに向ける凄まじいまでの嫌悪に比べたら、蛇蝎に対する些細な感情など全く取るに足らないものに過ぎないからだ。エヌ氏にとってくまのプーさんとは、吐き気を催すような邪悪そのもの、彼が全存在を賭けて構築してきた十全なる哲学の無間の底に存在する絶対悪であった。
 それにはとても悲しい理由がある。エヌ氏がまだ五歳のときのことだ。エヌ氏は優しい両親の元で健やかに育つ、たった一人の息子だった。家庭は裕福ではなかったが、両親はエヌ氏に惜しみない愛情を注ぎ、一家はとても幸せに暮らしていた。休みの日には三人で渓流釣りに出掛け、クリスマスにはサンタが家にやってきた。そんなある日、彼の母親が妊娠した。エヌ氏は妹が生まれることを望んだ。両親もそれに賛同してくれた。かわいい妹のために、優しくて頼りがいのあるおにいさんになるんだ。エヌ氏は堅く心に誓っていた。やがて母親は産気づき、病院に運ばれた。ロビーで落ち着きなく待つ、父親とエヌ氏。夜明け頃にドアが開く。手術は成功しました、と医者。エヌ氏は駆け出して手術室に滑り込んだ。しかしそこで看護婦に抱かれていたのは、妹ではなく、弟でもなく、なんと、体長 3m はあろうかという、くまのプーさんだったのである。
 これまでのあらすじのあらすじ。というわけで、エヌ氏とくまのプーさんとドナルドダックと高倉健は、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

──先日、東京ディズニーランドに行ってきたということですが。

エヌ氏「いかにも」

──どのような目的だったのでしょうか?

エヌ氏「何を分かり切ったことを。くだらない質問は止めてくれたまえ。君は私を馬鹿にしているのかね? わざわざ舞浜くんだりまで足を運んだんだ。『プーさんのハニーハント』のために決まっているではないか」

──はあ。そうですか。あれってどんなのでしたっけ。

エヌ氏「コーヒーカップのような乗り物に乗って、プーの奇妙な冒険が楽しめるというものだ」

──もうちょっと具体的にお願いします。

エヌ氏「ふむ。プーがクリストファー・ロビンから風船をもらって、気が付いたら洞窟で蜂蜜まみれだった。残念ながら解決編はなかった」

──いや、意味分かりませんよ。

エヌ氏「それから土産物屋でプーさんのソフトクッキーを買った」

──はあ。

エヌ氏「なかなかうまかったぞ。あれはいい。君もディズニーランドに行ったときは是非買いたまえ」

──……。

エヌ氏「ハニーハントはもう一回乗っても良かったんだがな、残念ながら時間がなかった。まあ次の機会ということにしておこう」

──お前、ほんとはプーさん大好きだろ。

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